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令和7年度税制改正で電帳法が見直し 重加算税10%加算で恩典

2025.05.27

はじめに

 令和7年度税制改正で電子帳簿保存法(電帳法)が見直された。経済社会のデジタル化に伴い、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用した上で、一定要件を満たして送受信・保存を行う場合、その電子取引データについては、電子取引データに関連する「隠蔽・仮装」行為に重加算税を10%加重する措置の対象から除外されることになった。

1.国税庁長官が定める基準に適合したシステム

 現在、所得税、法人税及び消費税における電子取引については、一定要件の基に電子取引データを送受信・保存しなければならず、こうした電子取引データは、複製・改竄などが容易であるため、電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については、重加算税(10%)が加重される(電帳法8⑤)。
 これが令和7年度税制改正で「国税庁長官が定める基準に適合したシステム」を利用し、請求書等の電子データを自動保存等すると"優良な電子帳簿保存"と認められることになり、仮に"仮装及び隠蔽"があったとしても10%加重適用とならず、青色申告65万円控除の適用を受けられるとされた。適用は令和9年1月1日以降から。
 「国税庁長官が定める基準に適合したシステム」は、(1)デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(「Invoice JP PINT」または「 JP Self-Billing」)か、(2)預貯金口座における銀行取引明細等の決済データのいずれかの取引データについて一定要件に従って保存できる機能を有するシステムとされており、下記の①~③の要件に従って保存できる機能を有しているものとされる。

新設する送受信・保存の要件(※1、2)
Ⅰ電子取引データの改ざん防止要件 ① データの送受信と保存を、訂正削除履歴が残るシステムやそもそも訂正削除ができないシステムで行う。
【改ざん防止の確保】
Ⅱ適正記帳のための要件 ② 電子取引データの金額を訂正削除を行った上で電子帳簿に記録することができないこと(又は訂正削除の事実を確認できるようにしておくこと)【記帳の適正性確保】

③ 電子取引データ(※3)と電子帳簿との関連性を相互に確認することができるようにしておくこと【電子帳簿との相互関連性確保】

(出典:財務省「令和7年度税制改正」を参考に筆者が作成)
(※1)新設する送受信・保存については、保存義務者において、上記の保存要件を満たしていることを確認できるようにしておく必要があり、あらかじめ届出が必要。
(※2)電子取引データの送受信・保存にあたっては、上記のほか、「見読可能装置の備付け」、「システムの概要書の備付け」及び「検索機能の確保」といった要件を満たす必要がある。
(※3)請求書・納品書等の重要書類に相当するデータに限定される。



(出典:財務省「令和7年度税制改正」より)


 青色申告特別控除65万円については、下記(1)中の「優良な電子帳簿の保存」をしている場合に代えて、上記の要件を満たすシステムを使用した上で、実際にその要件を満たし得る電子取引データを要件に沿って保存している場合にも適用できることとした。

【青色申告特別控除の概要】
正規の簿記の原則に従い
記録している者
左記に加え、
(1)電子帳簿の保存(優良な電子帳簿の保存に限る。)
又は(2)e-Taxによる電子申告をしている者
控除額 55万円 65万円
(※)令和9年分以後の所得税について適用する。
(出典:財務省「令和7年度税制改正」より)


以上のことから令和7年度の税制改正における電帳法改正のポイントは、以下の通り。

【納税環境整備】
(1)電子取引データに関連する隠蔽(いんぺい)・仮装行為について、重加算税の割合を10%加重する措置の対象から、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用した上で、一定の要件を満たして保存が行われている電子取引データを除外する。


(2)青色申告特別控除の控除額65万円の適用要件について、優良な電子帳簿の保存または電子申告をしていることのほか、上記システムを使用した上で、上記電子取引データを保存している者にも適用できることとする。


2.税務関係のデジタル化が背景に

 今回の改正について財務省が「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」(第1回)に提出した説明資料によると、「現状、データ連携が可能なソフトは限定的。また、相手方の都合もあり、取引に係るやり取りは書面やPDF等が主流」とし、一方で、「将来の目指すべき姿は、統一規格のデータや個々のソフト間のAPI連携等が普及し、多くの事業者がデータ連携を行うようになる」と将来を予想している。こうした状況を見据え、税制においてもデジタル化の姿を明確にする必要があるとしている。
 税務関係のデジタル化においては、デジタル化によるシームレスな会計処理を行うことによって、事業者の「入力誤りや計算ミス等が減少」「意図的な改ざんの機会が減少」「経理部門における単純作業の事務量が減少」「財務分析等に時間をかけ、経営の高度化ができる」「帳簿や国税関係書類の信頼度が向上」が期待され、税務行政においても「意図しない誤りを減らすだけでなく、意図的な原始資料の改ざんによる売上除外や架空経費などの不正リスクの低下」「より悪質な納税者への税務調査に行政リソースを投入することができる」としている。
 さらに税理士、支援機関、金融機関などが連携してデジタル化を進めていくことで、社会全体として効率化が進んでいくと見解を示している。こうした状況を背景に、今回の電帳法が見直された。

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