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令和7年度税制改正「基礎控除の特例」 給与所得者は令和7、8年ともに年末調整 令和7年11月までは従来通りの対応

2025.05.19

はじめに

令和7年度税制改正により、所得税の「基礎控除」「給与所得控除」が見直されたほか、新たに「特定親族特別控除」が創設された。
これら税制改正は原則、令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税に適用される。このため、同7年11月までの源泉徴収事務には変更は生じないが、12月以降に変更が生じるため、年末調整業務に注意が必要だ(図1参照)。

【 図1 】 給与の源泉徴収事務
令和 見直し・新設の制度
7年 11月まで 変更なし
12月 基礎控除の見直し
給与所得控除の見直し
特定親族特別控除の創設
8年 1月以降 扶養控除等申告書の記載事項の変更
扶養親族等の数の算定方法の変更
源泉徴収税額表の改正


1.基礎控除の見直しの対応

令和7年度税制改正では、合計所得金額が年2,350万円以下の人は基礎控除が48万円から一律10万円引上げられ58万円となった(図2参照)。

【 図2 】 所得税の基礎控除の見直し
合計所得金額 改正前 改正後
2,350万円以下 48万円 58万円
2,350万円超~ 2,400万円以下 48万円 48万円
2,400万円超~2,450万円以下 32万円 32万円
2,450万円超~2,500万円以下 16万円 16万円
2,500万円超 控除ナシ 控除ナシ


また、今回の税制改正では「基礎控除の特例」が創設され、合計所得金額655万円(給与収入850万円)以下の人を対象に基礎控除を収入金額に応じて5万円から37万円上乗せされる(図3参照)。

【 図3 】 基礎控除の見直し(今和7年、8年分措置と9年分以降)
合計所得金額 上乗額 基礎控除額 令和9年分以降
132万円以下 37万円 95万円 95万円
132万円超~336万円以下 30万円 88万円 58万円
336万円超~489万円以下 10万円 68万円 58万円
489万円超~655万円以下 5万円 63万円 58万円
655万円超~2,350万円以下 58万円 58万円
2,350万円超~2,400万円以下 48万円 48万円
2,400万円超~2,450万円以下 32万円 32万円
2,450万円超~2,500万円以下 16万円 16万円
2,500万円超 控除ナシ 控除ナシ
ともに令和7年分の所得税から適用となるが、給与所得者に関しては、基礎控除の一律引き上げは令和7年分年末調整での対応となり、源泉徴収は令和8年1月から反映される。つまり、11月までの給与の源泉徴収事務はこれまで通りに行い、12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との清算を行う。
一方で「基礎控除の特例」については、同7、8年分ともに源泉徴収での反映はなく、年末調整での対応となる。


2.給与所得控除の見直しの対応

今回の税制改正では、給与所得控除額の最低保証額が55万円から65万円に引上げられた(図4参照)。

【 図4 】 給与所得控除の見直し
給与の収入額 改正前 令和7年分以降
162万5000円以下 55万円 65万円
162万5000円超~180万円以下 収入金額×40%-10万円
180万円超~190万円以下 収入金額×30%+8万円
190万円超~360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超~660万円以下 収入金額×20%+44万円 収入金額×20%+44万円
660万円超~850万円以下 収入金額×10%+110万円 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円 (上限) 195万円 (上限)

給与所得控除の見直しで源泉徴収事務については、令和7年11月までは従来と変更ないが、令和7年分の給与の源泉徴収事務においては、12月の年末調整で行うことになり、改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」で計算した源泉徴収税額と精算する。


3.特定親族特別控除の創設に伴う対応

"生計を一"にする大学生などの子どもの年齢が19歳以上23歳未満で、青色事業専従者として給与の支払いを受けておらず、合計所得金額が58万円超123万円以下であれば、「特定親族」として、その者の合計所得金額に応じて「特定親族特別控除」を受けられることになった(図5参照)。

【 図5 】 特定親族特別控除







親族等の給与金額 親族等の合計所得金額 控除額
123万円超~150万円以下 58万円超~85万円以下 63万円
150万円超~155万円以下 85万円超~90万円以下 61万円
155万円超~160万円以下 90万円超~95万円以下 51万円
160万円超~165万円以下 95万円超~100万円以下 41万円
165万円超~170万円以下 100万円超~105万円以下 31万円
170万円超~175万円以下 105万円超~110万円以下 21万円
175万円超~180万円以下 110万円超~115万円以下 11万円
180万円超~185万円以下 115万円超~120万円以下 6万円
185万円超~188万円以下 120万円超~123万円以下 3万円

令和7年分の所得税において、特定親族特別控除を受ける場合は、12月に行う年末調整の際に新たに「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を給与の支払者に提出する。


4.令和8年分以降の源泉徴収事務における注意点

令和7年分までの「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」及び「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」には、「控除対象扶養親族」を記載することになっていたが、「特定親族特別控除」の創設にともない、令和8年分以降の扶養控除等申告書には「源泉控除対象親族」を記載することになる。

この「源泉控除対象親族」とは、①控除対象扶養親族もしくは②居住者と生計を一にする親族のうち年齢が19歳以上23歳未満で合計所得金額が58万円超100万円以下の①②のいずれかに該当する人(図6参照)。


【 図6 】 親族の合計所得金額

(注)年齢30歳以上70歳未満の非居住者については、 1 留学により国内に住所およ び居住を有しなくなった人、 2 障害者、 3その居住者からその年において生活費ま たは教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている人のいずれかに該当する 場合に限る。


なお、令和8年分以降の扶養控除等申告書は、令和7年分以前のものから様式が変更となる。変更後の様式については国税庁ホームページに令和7年6月末頃に掲載予定だ。

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