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2025年7月「税理士事務専門官」が新設!より税理士の取締りが厳しく!

2025.03.12

はじめに

2025年7月から税理士を取り締まる「税理士事務専門官」が全国の国税局(事務所)に配置される。税理士事務専門官は、国家公務員の定年年齢引上げに伴う役職定年制の対応として設けられ、経験豊かな国税職員が、税理士法違反行為者に対する懲戒処分やにせ税理士に対する取締り等に関する事務運営に従事する。

1.懲戒処分される税理士が増える傾向に

新設されるポスト「税理士事務専門官」。国税局には現在、税理士管理官の下に税理士専門官が配置されているが、業務過多になっているため、一部業務を税理士事務専門官が対応していくものと推察される。

税理士専門官は、税理士の懲戒処分に関する調査等を担当するが、この他にも税理士会との連絡協議など業務範囲は広い。そこで今回、税理士事務専門官を設け、税理士専門官が担っている事務的業務を担当させるものと思われる。

現在、税理士の懲戒処分に関する調査は国税庁も力を入れており、2024年12月12日、国税審議会が第112回の税理士分科会を開催したが、税理士懲戒処分事案26件を審議し、その結果、26件について懲戒処分を行うことが決まった。同年6月28日付官報では、税理士の懲戒処分者38件が公告されているため、2024年の税理士法違反者は合計64件と、前年に比べ2倍近い増加となった。また、2020年と比較すると、同年は13件だったことから、僅か3年度で懲戒処分者が5倍近くなったことになる(表1参照)。

表1:税理士・税理士法人の懲戒処分数
令和元年 令和2年 令和3年 令和4年 令和5年 令和6年
43 22 21 13 38 64

出典:国税庁データ等から作成

2.税理士に対する調査は3種類

税理士に対する調査は、①実態確認、②所得税等の課税調査、③税理士法違反の3つに分かれる。①は税務署の総務課が行い、業務内容などの確認が行われる。②は一般企業と同じ申告所得税等の調査で、③は税理士法違反に関する調査。税理士の懲戒処分は基本的に③の調査となるが、税理士法違反行為または事実があると認められる税理士・税理士法人に対して懲戒処分を視野に行われる。

懲戒処分の税理士法の根拠は、第48条「財務大臣は、税理士であった者につき税理士であった期間内に第45条又は第46条に規定する行為又は事実があると認めたときは、当該税理士であった者がこれらの規定による懲戒処分を受けるべきであったことについて決定をすることができる(以下略)」としている。

第45条の内容は、脱税相談等をした場合の懲戒で、一つは故意に不真な税務書類を作成した場合。もう一つが誤って不真正税務書類を作成したケースだ。故意に不正な税務書類を作成した場合は、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止、過失による税務書類の作成に関しては、戒告又は2年以内の税理士業務の停止となる。

税理士法46条に規定された違反は、

  1. ① 添付書面の虚偽記載等(法33の2①又は②)
  2. ② 信用失墜行為の禁止(法37)
    • ・ 自己脱税
    • ・ 多額かつ反職業倫理的な自己申告漏れ
    • ・ 税理士業務を停止されている税理士への名義貸し
    • ・ 調査妨害
    • ・ 業務怠け
    • ・ 税理士会の会費の滞納
    • ・ その他反職業倫理的行為
  3. ③ 非税理士に対する名義貸し(法37の2)
  4. ④ 秘密を守る義務違反(法38)
  5. ⑤ 帳簿作成の義務違反(業務処理簿:法41)
  6. ⑥ 使用人等に対する監督義務違反(法41の2)
  7. ⑦ 業務の制限違反(法42)
  8. ⑧ 税理士業務の停止処分を受け、その処分に違反して税理士業務を行ったとき(法46)
  9. ⑨ 上記以外の場合で法又は国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反したとき(法46)

となる。

3.税理士増で"不良税理士"増加の懸念も

国税当局で税理士を取り締まる部署は「総務部」で、その部門のトップは「税理士管理官」、その下に「課長補佐」、「税理士専門官」が配置されている。このほか税理士情報の収集や事務作業などを行う部門として「税理士係」があり、「係長」をトップに数名配置されている。

税理士事務専門官が何処に配置されるのかまだ分からないが、税理士の登録者数は毎年増え続けている。2015年度には75,643人だったが、2025年2月末時点では81,640人と、10年間で約6,000人増えた。税理士が増えれば不良税理士も増えることが予想されるため、国税当局として今後、より一層税理士の取り締まりを強化していくことになる。

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