定額減税 年末調整で注意すべきポイント
2024.11.15
はじめに
令和6年分(2024年分)の年末調整では、年末調整時点の定額減税額に基づき精算を行う「年調減税事務」が発生する。6月以降の給与・賞与からすでに所得税の定額減税は行っているが、年末調整で最終的な収入や扶養親族などの各種控除が決まったところで、定額減税額を再計算しないといけない。そこで年末調整における定額減税のポイントを解説する。
1.原則、年末調整の対象者が計算の対象に
令和6年に限り導入されている定額減税。所得税3万円、住民税1万円の合計4万円の減税が適用される。対象者は、年収2千万円以下(個人事業主は合計所得が1,805万円以下)の居住者。本人に加えて、同一生計配偶者や扶養親族も対象になる。
例えば、夫婦と子ども2人の4人家庭では、4万円×4人で最大16万円の減税が受けられる。
定額減税額の会計処理は、6月1日以降の給与、賞与の計算時に行う「月次減税」と、年末調整時に行う「年調減税」の2種類ある。
年末調整に当たり年調減税額の控除等の計算をする際には、以下のポイントに注意したい。
1点目は誰が対象となるかの確認で、原則、年末調整の対象者がなる。
年末調整では通常、以下3つの書類を従業員に提出してもらう。
- ①「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
- ②「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
- ③「給与所得者の保険料控除申告書」
図表1から見ると、②は「基礎控除申告書」(赤色部分)、「配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」(青色部分)、「所得金額調整控除申告」(緑色部分)が含まれたもの。
令和元年以前の「配偶者控除等申告書」に、令和2年から「基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」が追加され、令和6年は定額減税が行われたため、その申告内容が「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」に追加された。これは令和6年だけの臨時的な対応だ。
年末調整の対象者となるのは、令和6年分所得税の納税者である居住者で、給与所得以外の所得を含めた合計所得⾦額が 1,805万円以下の人。「居住者」とは、国内に住所を有する個⼈⼜は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個⼈。居住者以外の個⼈である「非居住者」は定額減税の対象ではない。
2.対象者ごとに年調減税額の計算をする
2点目のポイントとしては、対象者ごとの年調減税額の計算をすること。従業員から提出を受けた扶養控除等申告書等から年末調整を行う時点での同一生計配偶者の有無および扶養親族の人数を確認し、年調減税額を計算する。年調減税額の計算にあたって考慮すべき「同一生計配偶者」「扶養親族」の定義については、「同一生計配偶者」は控除対象者と生計を一にする配偶者(⻘⾊事業専従者等を除く)のうち、合計所得⾦額が48万円以下の⼈だ。「扶養親族」については、所得税法上の控除対象扶養親族だけでなく、16歳未満の扶養親族も含まる。
最初の月次減税事務を行ったときに提出された扶養控除等申告書等により確認し、その提出⽇の現況における同一生計配偶者の有無及び扶養親族の⼈数を把握する。扶養控除等申告書に記載された控除対象扶養親族及び16歳未満の扶養親族のうち、居住者である⼈の⼈数を確認し、月次減税額の計算のための⼈数に含める。扶養控除等申告書に記載していない同一生計配偶者や16歳未満の扶養親族については、最初の月次減税事務を行うときまでに、控除対象者から「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を受けることで月次減税額の計算のための⼈数に含めることができる。
控除対象者から「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を受けた場合は、その記載内容から同一生計配偶者等の合計所得⾦額の⾒積額が48万円以下であるか、居住者であるか及び扶養控除等申告書との重複がないかを確認し、月次減税額の計算のための⼈数に含める。その把握した合計⼈数を各⼈別控除事績簿の「同一生計配偶者と扶養親族の数」欄に記入していく。
3.年調減税事務では扶養親族の人数も確認
3点目だが、従来同様に年末調整を行い、年調所得税額を算出し、ここから年調減税額の控除を行うこと。そして控除後の金額に102.1%を乗じて復興特別所得税を含めた年調年税額を算出、過不足を精算する。年末調整終了後に作成する給与所得の源泉徴収票には、摘要欄に実際に控除した年調減税額を記載する。
年調減税事務では、月次減税事務を行う際に把握された対象者や減税額の計算のための扶養親族などの人数をあらためて確認することが不可欠だ。従業員の中には、副業収入や不動産所得など、給与以外の所得がある場合も考えられる。合計した所得金額が1,805万円を上回る(給与収入のみの場合は2,000万円を超える)場合、年末調整時の定額減税は対象外だからだ。ただ、定額減税の対象外であっても、月次減税では、いったん対象者として計算。しかし、定額減税そのものが対象外であるため、月次減税をしたのちの年末調整もしくは確定申告により再調整を行う。
従業員の入社日によっても計算の仕方が変わってくる。今年の6月1日時点で在籍している従業員が月次減税の対象になるため、6月2日以降に入社した場合は、6月分の給与支払いが発生したとしても月次減税の対象外。そのため年調減税を適用して対応する。
なお、実務的な取り扱いでの疑問は、国税庁から「令和6年分所得税の定額減税Q&A」が公開されているので確認しながら処理していくことをお勧めする。