「企業版ふるさと納税」 令和5年度は寄附額・件数ともに過去最高
2024.10.21
はじめに
自治体の地方創生事業に寄附した企業が税優遇を受けられる地方創生応援税制、いわゆる「企業版ふるさと納税」だが、内閣府によると令和5年度(2023年度)の寄附額及び寄附件数が過去最高を更新した。企業版ふるさと納税は、寄附した企業は立地自治体に納める法人住民税の控除などが受けられる上、一部を損金に計上することができる。総務省は「企業版ふるさと納税」について、令和6年度までの時限措置を5年間延長するよう令和7年度税制改正で要望している。
1.税額控除の特例措置5年延長を税制改正で要望
内閣府によると、令和5年度の企業版ふるさと納税を利用した寄附金実績は、寄附額が前年度比約1.4倍の約470億円、寄附件数が約1.7倍の1万4,022件となり、前年度に続き金額・件数ともに大きく増加した。
また、寄附を行った企業数は7,680件となり、こちらも前年度と比較して約1.6倍に増加。さらに、令和5年度に寄附を受領した地方公共団体の数は1,462となり、前年度と比較して約1.1倍に増加している。令和5年度までの累計では1,536の地方公共団体が本制度を活用している。
企業版ふるさと納税は、民間企業が国に認定を受けた地方創生の計画を持つ都道府県や市町村を選んで寄附ができる制度で、寄附した企業は立地自治体に納める法人住民税の控除などが受けられる上、一部を損金計上することで最大9割、税負担を軽減できる。具体的には、法人住民税は寄附額の4割を税額控除。ただし、法人住民税法人税割額の20%が上限。また、法人住民税で4割に達しない場合は、その残額を法人税より控除する。こちらは寄附額の1割を限度。このほか、法人事業税においては、寄附額の2割を税額控除。上限は法人事業税の20%となっている。
なお、企業版ふるさと納税は、本社がある自治体への寄附はできないほか、個人版と異なり返礼品の受け取りは禁止されている。一方で企業は寄附実績のPRはしてよい。
2.利用者の増加要因に手続きの大幅簡素化
内閣府によると、増加要因と考えられるのが、令和2年度の税制改正でこれまで最大6割だった税の軽減効果を最大9割に引上げたほか、手続きが大幅に簡素化したことを上げる。
寄附受入額が多い地方公共団体をみると、トップは前年度3位の「宮城県」の25億7,950万円、次いで「宮城県仙台市」24億400万円、「石川県」23億860万円、「静岡県裾野市」22億5,170万円と続く。
寄附を活用した事業の分野別実績額をみると、「しごと創生」(地域産業振興、観光振興、農林水産振興、ローカルイノベーション、人材の育成・確保等)が214億900万円で一番多く、次いで「まちづくり」(小さな拠点、コンパクトシティ)が181億5,870万円、「地方への人の流れ」(移住・定住の促進、生涯活躍のまち等)が45億830万円、「働き方改革」(少子化対策、働き方改革等)が29億2,270万円と続く。
さらに、企業版ふるさと納税の仕組みを活用して、専門的知識・ノウハウを有する企業の人材の地方公共団体等への派遣を行う「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」については、令和5年度は98の地方公共団体が活用している。詳細は以下のとおり。
なお、企業版ふるさと納税については、総務省がデジタル田園都市国家構想の実現及び地方創生の更なる充実・強化に向け、地方への資金の流れを一層高めるとともに、その流れを継続的なものとする観点から税の軽減効果(寄附額の最大約9割)を維持した上で、令和6年度までとなっている税額控除の特例措置を5年間延長し、令和11年度までとすることを令和7年度税制改正要望に盛り込んでいる。