令和7年度税制改正 各府省庁の要望固まる ~経産省は中小企業経営強化税制の拡充・延長を要望~
2024.10.08
はじめに
各府省庁の令和7年度税制改正要望がまとまった。今回は、現在の特例措置の延長や見直しが多く、新たなものとしては、経産省が「産業用地整備促進税制」の創設を盛り込んだ。これら各府省庁の要望は、各業界団体等からの要望と合わせ、与党税制調査会による審議を経て12月中旬に税制改正大綱にまとめられる。
この数年、経産省からの要望を中心に新たな税制が創設されている。令和6年度税制改正では、「戦略分野国内生産促進税制」「イノベーションボックス税制」などだ。しかし、同7年度税制改正要望には「産業用地整備促進税制」の創設などが盛り込まれただけで、既存制度の延長・拡充の要望が中心となっている。
1.経産省が要望する「産業用地整備促進税制」とは...
今回、経産省が創設を要望する「産業用地整備促進税制」とは、地方公共団体が連携した民間事業者による産業用地の整備事業について、地権者が土地を譲渡した際の売却益に対して所得控除を設けるもの。
これにより、地方公共団体が地権者から直接土地を取得するのと同様の措置になることが見込まれる。事業拡大に意欲のある企業が増加しているなか、産業用地の造成が開発スピードや供給量に追いついておらず、国内での立地面積は毎年順調に推移しているものの分譲可能な産業用地面積はこの十数年減っている。そのため、地方公共団体では企業からの立地に関する問合せが増加している一方で、産業団地を確保できている都道府県等はほとんどなく、企業の立地ニーズに合った用地を用意できていない状況となっている。
現在、用地造成に際して、地方公共団体が地権者から土地を取得するときに所得控除が適用されるが、地方公共団体と連携した民間事業者が土地を取得する場合には同様の措置はない。そこで、その部分を補てんする税制として、経産省が「産業用地整備促進税制」の創設を盛り込んだわけだ。
このほか、既存制度の延長・拡充に加え、新制度の創設も要望しているのが「中小企業経営強化税制」「地域未来投資促進税制」だ。
「中小企業経営強化税制」の要望内容は、適用期限の令和6年度末から2年間延長するとともに、成長志向の高い売上高が100億円を超える中小企業(100億企業)の創出を推進するための上乗せ措置の創設等を要望している。
現状は、中小企業等経営強化法による認定を受けた計画に基づく設備投資について、即時償却および税額控除(10%もしくは7%)のいずれかが適用されている。
「地域未来投資促進税制」においては、令和6年度末で切れる適用期限を2年延長し、拡充措置として地方公共団体が戦略的に重点支援を行う産業分野を「重点促進分野(仮称)」についての設備投資に関しては、優遇措置を創設することを要望としている。
既存制度の延長・拡充要望については「中小企業投資促進税制」「中小企業等の法人税率の特例」について、それぞれ適用期限である令和6年度末から2年間延長を要望。令和6年度税制改正で特例承継計画の提出期限が令和8年3月末まで延長された「法人版・個人版事業承継税制」については、役員就任要件等の見直し及び円滑な事業承継のための必要な措置の検討するように求めている。
2.所有者不明土地の免税措置及び子育て世代の住宅ローン控除の延長等
法務省は、資産税関係で「所有者不明土地等問題の解決のための登録免許税の特例」について、更なる拡充や新たな免税措置を講ずることを要望。具体的には、個人が相続により取得した土地の相続登記に係る登録免許税の課税標準となる価額が100万円以下である場合の登録免許税の免税措置の要件を緩和するとともに、更なる拡充及び新たな免税措置を講ずることを要望している。このほか、相続により土地を取得した個人が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置等について、適用期限を3年延長し、令和10年3月31日までにすることなどを求めている。
国交省は現在の子育て世帯等に対して拡充されていた住宅ローン減税およびリフォーム減税を1年間延長することを要望している。
厚労省は、生命保険控除の拡充を要望。内容としては、「令和6年度税制改正大綱(自民党党・公明党)」において「子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充」として示された措置。令和6年度税制改正大綱には、「生命保険料控除における新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について、23 歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の4万円の適用限度額に対して2万円の上乗せ措置を講ずること。なお、本制度の控除の適用対象から除外される『一時払い生命保険』の範囲に共済期間が短期間の商品が含まれるかについては、今後、税制改正要望のプロセスにおいて確認する」としている。
このほか、内閣府は、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)について、現行の税の軽減効果(寄附額の最大約9割)を維持したうえで、税額控除の特例措置の適用期限を令和11年まで5年間延長することを求めている。
さらに、令和8年4月施行予定の「公益信託制度」について、譲渡所得非課税の「承認特例」の対象を追加することなど検討することを求めている。