インボイス導入後初の確定申告 「免税事業者から登録」105万人
2024.08.16
はじめに
令和5年10月1日から適格請求書等保存方式(インボイス制度)がスタートしたが、国税庁の発表では、インボイス制度導入後、初となる令和5年分の個人の確定申告では、同年中にインボイス発行事業者となった者の約9割が期限内申告を行ったことが明らかとなった。また、免税事業者からインボイス発行事業者になった者のうち、2割特例を適用した申告者数は73万4千人で、83.9%が適用していることも分かった。
1.納税人員、申告納税額、所得金額の全てで増加
国税庁が令和6年5月31日に公表した令和5年分所得税等の確定申告状況によると、「所得税の確定申告書」提出者数は、前年を1.3%上回る2,324万人で、納税額のある納税者は同2.3%増の668万7千人。3年ぶりの増加となった。所得税の納税者が増えたことから、所得金額も同7.0%上回る49兆5,574億円となり、4年連続で増加している。
申告納税額は、前年を10%上回る4兆499億円(+3,698億円)。こちらも2年ぶりに増加。令和4年分と比較すると、納税人員、申告納税額、所得金額の全てで増加したことが明らかとなった。なお、還付申告者数も前年分より1.3%増加して1,350万7千人と、3年連続で増加している。
このうち、株式等の譲渡所得の申告者は前年分より6.7%増え115万5千人と3年ぶりに増加。所得金額がある人は同32.6%増の64万8千人、所得金額は同39.4%増の5兆6,641億円と、ともに大幅増加となっている。
また、土地等の譲渡申告者は同0.5%増え55万5千人、うち所得金額がある人は同0.8%増えて37万5千人だった。所得金額は同11.8%増え6兆832億円で、前年分からいずれも増加している。
贈与税については、申告書を提出した人は前年分より2.6%増え51万人で、申告納税額も10.9%増え3,548億円と、贈与税の基礎控除額が引き上げられた平成13年以降で最高額だった。
贈与税の申告書を提出した人のうち、暦年課税を適用した人は前年比1.5%増の46万1千人、その納税額は10.9%増の2,985億円となっている。
一方で相続時精算課税を適用した人は、前年比13.3%増え4万9千人、申告納税額は前年比10.9%増の563億円といずれも増加している。
2.インボイス制度スタート後の消費税の確定申告状況
令和5年分の所得税確定申告は、インボイス制度がスタートして初めての確定申告だったが、個人事業者の消費税申告件数は、免税事業者から新たに課税事業者に転換したことにより、全体としては前年分の105万5千件から91万7千件増え、197万2千件(対前年比+86.9%)と大幅に増加した。また、申告納税額も、前年分の6,277億円から9.1%増え6,850億円と増加している。
3.「2割特例」適用の申告者73万4千人
国税庁の発表によると、5年中にインボイス発行事業者になった者は197万6千人いるが、そのうち、期限内申告したものは約9割に当たる174万4千人とかなり高い数字となっている。
インボイス発行事業者の登録者の中には、同5年中に申告すべき取引等がなく、消費税の申告義務がない者も含まれており、インボイス発行事業者のうち消費税の申告義務が基本的にあると考えられる者の申告状況を見てみると、約94%の納税者が期限内に消費税申告を行っている。例年の申告状況は約 85~90%となっていることから、この数字はかなり高いことが分かる。
さらに消費税の申告状況を詳細に見ていくと、インボイス制度がスタートして免税事業者からインボイス発行事業者になった者は104万8千人に上るが、そのうち期限内に申告したものは約84.5%の87万5千人に上る。国税庁のインボイス制度の周知徹底が実った形だ。国税庁では現在、課税事業者で申告書の提出がないものには「お尋ね」「行政指導」をするなりして期限後申告を奨励している。
なお、免税事業者からインボイス発行事業者になった者のうち、2割特例を適用した申告者数は73万4千人で、83.9%となっている。2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者になった者を対象に、納付税額を売上に係る消費税額を2割にできる特例。2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となっている。