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政府税調 令和7年度税制改正向け議論スタート

2024.07.08

はじめに

令和7年度税制改正に向け、政府税制調査会(首相の諮問機関)が動き出した。5月13日には、会長に翁百合・株式会社 日本総合研究所理事長が就任してからの実質的な初会議が開催され、6月28日には専門家会合もスタートしている。

岸田首相から「経済成長と財政健全化の両立を図るとともに少子高齢化、グローバル化、デジタル化等の経済社会の構造変化に対応したこれからの税制の在り方」の諮問を受けての会合であり、税制改正の骨格を話し合っていく。政府税調は学者や企業経営者らが、税制のあり方を中長期的な視点で議論。一方で、具体的な税制は、与党税制調査会が毎年の年末にまとめる税制改正大綱で、翌年度の改正案が決まる。

1.女性委員の比率は4割超

11年間続いた中里実・東大名誉教授から後を継いだ女性初の政府税制調査会会長となる翁百合氏が動き出した。翁会長体制では、委員に占める女性の割合が4割を超えているのが大きな特徴だ。

新体制での議論のキックオフとなった5月13日には、「経済社会の構造変化」等をテーマに働き方の多様化、賃金上昇、金利のある世界への踏み出しなどについて意見交換した。

とくに、女性の社会進出や働き方の多様化に伴う中立な税制の仕組みへの見直しでは「配偶者控除」についても意見が相次ぎ、労働経済学が専門の奥平寛子・同志社大院准教授は「すでに壁は消失しているが、複数のデータを確認すると、103万円前後で調整しながら働いている人は非常に多い」と指摘。「制度上の壁をなくして終わりでいいのか。配偶者控除が所得の再分配の機能を果たしているのか、丁寧にデータを見ていく必要がある」と問題を提起した。

この他にも、労働市場の流動化を通じて個人がスキルアップをしていく流れを防げない税制、高齢者の新しい働き方を防げない税制などの必要性が示された。

2.3つの専門家会合を設置

6月4日に開催された会合では、退職所得課税や配偶者控除等の見直しの検討にあたり、より専門的かつ技術的な見地から論点を深堀するため、EBPM(証拠に基づく政策立案)の推進について議論。3つの専門家会合を設置することを決め、各会合でまとめた論点を適宜報告し、それを受けて総会で議論をしていくことを決めた。

今回、設置が決まった専門家会合は、以下の通り。

  • 1.「税制のEBPMに関する専門家会合」(座長=赤井伸郎大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)
  • 2.「活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合」(座長=佐藤英明慶応大学大学院法務研究科教授)
  • 3.「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」(座長=岡村忠生京都大学名誉教授)

3.税制改正の骨格を話し合う

このうち、「活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合」では、総会の場で配偶者控除等の見直しを行うべきとの意見が挙がったことから、個人所得課税全体を俯瞰した分析・検証を行いつつ、基礎的な控除を含めた見直しの議論を進める。

また、退職所得課税や公的・私的年金制度についても、今夏に行う予定の公的年金の財政検証を受けて速やかに検討を行い、議論の素材を整理する考え。退職金をめぐる税制の見直しついては、転職者が近年増加していることから、複数の委員から「個人の(職業や転職の)選択に影響を及ぼさないよう中立に見直すべきだ」との声も上がっている。これまでも見直しの俎上に上がってきた問題だけに、令和7年度税制改正において、ある一定の方向性が示されることになるだろう。

6月28日には、第1回となる「税制のEBPMに関する専門家会合」が開催され、総会の第2、3回の意見を検証し、以下の内容を今後の検討の視点としていくことを確認した。

  • 1.「成長志向の法人税改革」の振り返り
    • (1) 法人税収の推移
    • (2) 法人税率と企業の投資行動、賃上げインセンティブとの関係
    • (3) 法人税率と立地競争力との関係
    • (4) 法人税と生産性、経済成長
    • (5) 法人税の実質負担
    • (6) 大企業、中堅企業等
  • 2.租税特別措置の効果検証
    • (1) 賃上げ促進税制
    • (2) 研究開発税制
    • (3) その他の租税特別措置(令和7年度改正)
  • 3.EBPM推進のための態勢整備
    • (1) 各省庁の取組を含めた現状や課題の整理
    • (2) データ・手法の整備、分析人材確保
    • (3) 法人税以外への取組の発展
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