改正税理士法スタート ニセ税理士の税務相談をシャットアウト
2024.05.23
はじめに
税理士法が改正され令和6年4月1日から、税理士以外の者が一定の税務相談を行った場合の取り締まりが強化された。SNSの普及で、税理士でないものが、不特定多数の者に脱税指南をする恐れがあるため、これを取り締まるもの。財務大臣は、税務相談等の停止を命令できるほか、命令に違反した場合は、1年以上の懲役または100万円以下の罰金に処することができる。
1.SNS等による容易な脱税指導の防止
令和5年度税制改正により「税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度」が創設された。令和4年度税制改正では、税理士制度の見直しとして、「税理士法に違反する行為又は事実に関する調査の見直し」があったが、今回の改正はこれをさらに補完するもの。
今回の改正は、SNS等の普及により税理士でない者が不特定多数の者に対して脱税指南等をできる環境になったことから、これを防止する目的がある。
2.主なポイントは4つ
今回の見直しにおいて、主なポイントは以下の通り。
- (1)財務大臣は、税理士や税理士法人でない者、いわゆる"ニセ税理士"による税務相談で、脱税などが指導されている場合には、これを止めさせる命令を出すことができる
- (2)命令した旨の公告
- (3)国税庁長官は、財務大臣が命令を出すかどうかについての質問検査権を持つ。そして、税理士や税理士法人でない者が税務相談を行ったとき、その者に対しての報告の徴取、質問又は検査の権限を整備
- (4)質問検査等に対する拒否又は虚偽答弁等についても罰則を設ける
(1)については、財務大臣が税理士又は税理士法人でない者が税務相談を行った場合において、更に反復してその税務相談が行われることにより、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れさせ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けさせることによる納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、その税理士又は税理士法人でない者に対し、その税務相談の停止その他その停止が実効的に行われることを確保するために必要な措置を講ずることを命ずることができるというもの。
対象になるのは、脱税指南により不特定多数の者が国税を逃れる申告を行うなど、わが国の税務行政の根幹を揺るがしかねない行為が想定される場合。「緊急に措置をとる必要がある」ケースとしては、営業広告の中止や顧客名簿の廃棄などがある。
(2)は、(1)の命令をしたときに、その旨を国税庁ホームページや官報に公告し、不特定多数の者が確認できる状態にしておくなどが想定される。この期間に関しては、命令を受けた日から3年間として取り扱うとしている。
(3)については、国税庁長官は、(1)の命令をすべきか否かを調査する必要があると認めるときは、税務相談を行った者から報告を徴し、又は当該職員をしてその者に質問し、若しくはその業務に関する帳簿書類を検査させることができるとしたもの。
これまで、税理士や税理士法人でない者に行政上の対応のための情報収集をしようとした場合、調査忌避をしたときの罰則を科すような根拠規定がなかったことから、これに対応したもの。
(4)については、命令違反に対する罰則を設け、法定刑は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、虚偽報告等をしたときは30万円以下の罰金を課すことができるとしている。