税理士、公認会計士向け総合支援情報サイト

TOPコラム一覧定額減税Q&A 3月、4月の改訂内容を解説

定額減税Q&A 3月、4月の改訂内容を解説

2024.05.09

はじめに

令和6年度(2024年度)税制改正で創設された定額減税が6月からスタートするが、国税庁は「令和6年分所得税の定額減税Q&A」を必要に応じて改定しているため、確認しておきたい。3月18日には新たに8問が追加、4月11日には新たに11問が追加されたほか、既存の4問についても修正が加えられている。

1.3月に8問、4月に11問の「Q&A」を追加

物価高対策による国民負担を軽減するため、1年限りの「定額減税」が令和6年6月以降から実施されるのに伴い、国税庁では定期的に「定額減税Q&A」を修正、追加している。

定額減税は、日本の居住者に対して、1人あたり所得税で3万円、住民税で1万円の合計4万円を減税するもの。ただし、本人の合計所得金額が1,805万円以下でなければ定額減税の対象とはならない。所得税は、6月以降の給与・賞与といった月次の源泉徴収から減税し、個人住民税は、令和6年度分(一部、令和7年度分)の措置として実施される。対象者の要件や必要書類、年末調整での取り扱いが複雑であるため、注意が必要だ。

国税庁では5月7日現在、3月18日と4月11日に改訂をしている。

2.障害者である同一生計配偶者の扱い

3月に追加された6-13「扶養控除等申告書に記載された障害者である同一生計配偶者」では、「令和6年中の所得金額の見積額が900万円超の基準日在職者が、その同一生計配偶者について障害者控除を受けるため、同一生計配偶者の氏名等を扶養控除等申告書の摘要欄に記載している場合、この同一生計配偶者は月次減税額の計算に含めることになるか」との問いに対し、「扶養控除等申告書に記載された同一生計配偶者のうち、月次減税額の計算に含めることができるのは、源泉控除対象配偶者である同一生計配偶者に限られるため、源泉控除対象配偶者でない同一生計配偶者を、月次減税額の計算に含めるためには、別途、基準日在職者から、同一生計配偶者についての記載がある『源泉徴収に係る申告書』の提出を受ける必要がある」としている。

つまり、「扶養控除等申告書」には同一生計配偶者が障害者控除を受けるための記載欄が設けられているが、この記載事項をもって月次減税の計算へ含めることはできない。「扶養控除等申告書に記載された同一生計配偶者」のうち、月次減税額の計算に含めることができるのは「源泉控除対象配偶者である同一生計配偶者」に限られる。そのため、既設の6-5にある扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者の「令和6年中の所得金額の見積額」が 48万円以下であるかどうかを確認し、月次減税額の計算に含めるべき同一生計配偶者か否かを判定することになる。

一方、「源泉控除対象配偶者でない同一生計配偶者」については、様式案が公表されている「令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書」に同一生計配偶者に関する記載を行い提出することで月次減税額の計算に含めることができる。

ただし、3月に追加された6-14「扶養控除等申告書等以外の様式の使用可否」では、「扶養控除等申告書等以外の様式を使用して、基準日在職者から月次減税額の計算に含める配偶者や扶養親族の氏名等の提出を受けてもよいか」との問いに対し、「法令で定められた記載すべき事項が漏れなく記載できるのであれば、国税庁ホームページに掲載されている扶養控除等申告書及び「源泉徴収に係る申告書」以外の様式を使用して、基準日在職者から月次減税額の計算に含める配偶者や扶養親族の氏名等の提出を受けて差し支えない」としている。

また、「給与の支払者が、基準日在職者から扶養控除等申告書等に記載すべき事項に関し、電磁的提供を受けるための必要な措置を講じる等の一定の要件を満たしている場合には、その基準日在職者は、書面による申告書の提出に代えて、電磁的方法により申告書に記載すべき事項の提供を行うことができる」としている。

3.合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる場合

令和6年6月からの月次減税では、令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれるかどうかにかかわらず、同6年6月以降の給与等に係る源泉徴収の際に、控除対象者は一律に減税額の控除を受けるとされている。しかし、合計所得金額が1,805万円以下であったとしても、給与所得以外の所得があり、令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超えることが明らかである場合は、年末調整時に定額減税の適用が受けられないとしている。

4月に追加された2-8においては、「令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超えることが明らかなので月次減税を行わないでほしい」という申出を従業員から受けた場合について、「控除対象者は一律に減税額の控除を受けることになるため、控除対象者自身が定額減税の適用を受けるか受けないかを選択することはできない」としている。

このほか、4月に追加されたQ&Aでは、青色事業専従者は定額減税の適用を受けられるのかといった項目や、休職者に対する取り扱いも示された。

青色事業専従者に適用有無については、2-9で「主たる給与の支払者のもとで月額減税・年調減税等が行われるが、納税者の同一生計配偶者や扶養親族とはされないことから、納税者と生計を一にしていたとしても、(その納税者の)定額減税の計算には含めない」としている。

休職者の取扱いについては、3-5において「休職扱いとされている従業員が、令和6年6月1日現在においてその給与の支払者から実際に給与の支払を受けていない状況にあるとしても、同日現在その支払者の従業員としての身分があり、かつ、その支払者に扶養控除等申告書を提出している限り基準日在職者に該当します」としている。

詳細は、国税庁ホームページ「令和6年分所得税の定額減税Q&A」を参照して頂きたい。

参考:「令和6年分所得税の定額減税Q&A」改訂内容

<3月18日に改訂されたQ&A>

【追加】

  • 5-3:前月の給与の金額の10倍を超える賞与を支払う場合
  • 6-13:扶養控除等申告書に記載された障害者である同一生計配偶者(月次減税時)
  • 6-14:扶養控除等申告書等以外の様式の使用可否(月次減税時)
  • 7-5:給与の増額改訂があった場合
  • 8-9:同一生計配偶者について「源泉徴収に係る申告書」に記載して提出した場合の取扱い
  • 8-10:扶養親族について「源泉徴収に係る申告書」に記載して提出した場合の取扱い
  • 8-11:扶養控除等申告書に記載された障害者である同一生計配偶者(年末調整時)
  • 8-12:扶養控除等申告書等以外の様式の使用可否(年末調整時)

<4月11日に改訂されたQ&A>

【追加】

  • 1-9:定額減税の実施方法(公的年金等)
  • 1-10:源泉徴収で定額減税を行う公的年金等の範囲
  • 2-8:所得制限を超える人から定額減税不要の申出があった場合
  • 2-9:青色事業専従者に対する定額減税
  • 3-5:休職者に対する定額減税
  • 9-3:源泉徴収簿の記載方法
  • 10-2:所得制限を超える人の源泉徴収票の記載方法
  • 10-3:外国人技能実習生の源泉徴収票の記載方法
  • 10-6:同一生計配偶者や扶養親族となっている人の源泉徴収票の記載方法
  • 10-7:源泉徴収票の「控除外額」と給付金
  • 12-2:定額減税と併せて行われる各種給付措置に対する課税

【修正】

  • 1-7:定額減税の実施方法(給与所得以外)
  • 2-7:基準日前に死亡退職・非居住者となった人に対する定額減税
  • 10-1:源泉徴収票への記載方法
  • 12-1:定額減税と併せて行われる各種給付措置
ページの上部へ