2024年4月1日から相続登記が義務化 2026年からは住所等の申請義務も
2024.04.10
はじめに
「所有者不明土地」が全国で増加していることを受け、2024年4月1日から相続登記の申請義務化がスタートした。
相続登記とは、正確には「相続による所有権の移転の登記」と言い、土地や建物の不動産の所有者が亡くなったときに、その土地や建物の名義を被相続人から遺産を引き継いだ相続人へ変更する手続のこと。
わが国では、所有者が亡くなったのに相続登記がされないことによって、登記簿を見ても所有者が分からない土地が急増。そのため、周辺の環境悪化や民間取引・公共事業の阻害が生ずるなど、社会問題化している。
そこで、所有者不明土地の問題を解消するため、2021年4月に「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立・公布。これにより、土地の相続に関する新しいルールが設けられ、これまで任意だった相続登記が義務化された。
法務省によると、所有者不明土地が生じる主な原因としては、「土地の相続の際に登記の名義変更が行われないこと」「所有者が転居したときに住所変更の登記が行われないこと」などを指摘。例えば、長期間、相続登記をしないまま放置しておくことにより、土地の相続に関係する者が増え、所有者を特定したり、土地を処分したりすることが極めて困難になってしまうとしている。2022年度に地方公共団体が実施した地籍調査事業では、不動産登記簿のみでは所有者の所在が判明しなかった土地の割合は、24%(令和4年度国土交通省調べ)にも及んでいる。
1.「知った日」から3年以内に相続登記
所有者不明土地の問題を解決するため、相続登記の申請が2024年4月1日から義務化されたわけだが、具体的には、相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを「知った日」から3年以内に、相続登記しなければならないとされている。「知った日」からスタートするため、たとえば、亡くなった親が不動産を所有していたかよく分からない場合は、取得した不動産を具体的に知るまでは、相続登記の義務はない。
相続人間の協議による遺産分割で不動産を取得した場合、別途、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をする必要がある。なお、不動産を取得しなかった相続人には相続登記の義務はない。
相続登記を申請しようとする場合、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本などの書類を収集して、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要がある。そのため、期限内(3年以内)に相続登記の申請をすることが難しい場合も想定され、簡易に相続登記ができる制度も設けられた。それが「相続人申告登記」だ。
「相続人申告登記」は、諸事情により相続登記を申請することができない場合、自分が相続人であることを法務局の登記官に申し出ることで、相続登記の申請義務を果たすことができるもの。同制度を利用すれば、自身が相続人であることが分かる戸籍謄本等を提出するだけで申出となる。
なお、相続登記の義務化は、2024年4月1日より前に相続したが相続登記がされていない不動産も義務化の対象になり、2027年3月31日までに登記する必要がある。
また、「正当な理由」がないのに期限までに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科されることもある。
「正当な理由」について法務省は、
- 相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
- 相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
- 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
- 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
- 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合
としている。
2.登録免許税の免税措置について
今回の相続登記の義務化においては、相続登記を促進するため一定要件に該当する土地については、登録免許税の免税措置が2025年3月31日まで延長された。
<免税措置の適用要件>
- 相続により土地を取得した者が相続登記をせずに亡くなった場合の相続登記
- 不動産の価額が100万円以下の土地に係る相続登記
また、要件2については、適用対象が全国の土地に拡充されている。
3.2026年4月からは住所等の変更登記が義務化
このほか、2026年4月1日からは、住所等の変更登記の申請が義務化される。登記簿上の不動産の所有者は、所有者の氏名や住所を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請を行う必要がある。正当な理由がないのに申請をしなかった場合には、5万円以下の過料の適用対象だ。
なお、土地を相続したものの使い道がなく、手放したいけれど引き取り手もなく、処分に困っているケースにおいては、すでに2023年4月27日から国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」が設けられている。基本的には、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人であれば、だれでも申請できるが、土地が共有地の場合は、共有者全員で申請する必要がある。その場合、法務大臣(窓口は法務局)の承認を得た上で、負担金(10年分の土地管理費相当額)を納付する。