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「Q&A」「源泉所得税関係の様式」を公表

定額減税で国税庁が特設サイトを開設
「Q&A」「源泉所得税関係の様式」を公表

2024.03.27

はじめに

令和6年度税制改正により、2024年6月1日以降に支払われる給与から源泉徴収を行う際に定額減税が実施される。国税庁は「定額減税の特設サイト」を開設したほか、「定額減税Q&A」を公表するなど、具体的な進め方を紹介している。また、未定となっていた定額減税をしきれない者に対して減税額に満たない部分を補足するために各自治体が給付する「調整給付」の時期についても明らかとなった。

1.デフレ脱却のための一時的な措置としての定額減税

令和6年度税制改正により、2024年に限定した所得税・個人住民税の定額減税が行われる。適用対象者は、令和6年分所得税の納税者である日本の居住者で、かつ所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である人。給与収入のみの人については、給与収入(賞与を含む)の目安が2千万円以下も対象となる(「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」の適用を受ける方は、2,015万円以下)である方)。なお、個人住民税は前年の所得に対して課税されるため、2023年分の所得金額により判定される。

定額減税は、納税者本人だけでなく同一生計配偶者や扶養親族分も減税額に加算される。同一生計配偶者とは、2023年12月31日の現況において、生計を一にしている合計所得金額が48万円以下の配偶者だ(青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていない、又は白色申告者の事業専従者でない)。

所得税及び住民税の減税額の計算

所得税:本人3万円 + 同一生計配偶者又は扶養親族×3万円

住民税:本人1万円 + 同一生計配偶者又は扶養親族×1万円

例:配偶者と子(扶養親族)2名の場合の減税額

所得税:3万円+3名(配偶者、子2)×3万円=12万円

住民税:1万円+3名(配偶者、子2)×1万円=4万円

⇒減税額の合計:所得税12万円+住民税4万円=16万円

所得税については、6月以降に支払う給与から控除を行い、控除しきれない所得税は次回給与に繰り越され、2024年中に支払われる給与等の源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除する。また、住民税については、2024年6月分給与では特別徴収が行われず、定額減税後の住民税の額を11分割し、2024年7月分~2025年5月分の給与で特別徴収する。

2.定額減税の疑問点をまとめたQ&Aを公表

国税庁では現在、定額減税における混乱を未然に防ぐため、「定額減税の特設サイト」を開設して定額減税に関する情報を提供しているほか、「令和6年分所得税の定額減税Q&A」を公開し、実務上迷いやすい判断について解説している。

Q&Aからいくつかピックアップすると、「退職所得から源泉徴収された所得税は、定額減税の対象となるか。また、対象となる場合、定額減税の適用を受けるために何をすればよいのか」という質問がある。これについては、確定申告により定額減税額の控除を受けることができるとし、給与等に係る源泉徴収において控除しきれなかった定額減税額がある場合には、令和6年分の確定申告書を提出することで、退職所得を含めた所得に係る所得税について、定額減税の適用を受けることができるとしている。

2カ所から給与を受ける人の定額減税の計算の仕方については、主たる給与の支払者のもとでのみ控除されるとし、控除しきれなかった金額がある場合には、確定申告の際に、控除しきれなかった金額を精算するとしている。また、日雇賃金(丙欄適用給与)の支払を受けている人の定額減税については、給与の支払者のもとで定額減税の適用は受けられず、令和6年分所得税について確定申告によって定額減税の適用が受けられるとしている。

さらに、2024年6月の時点では扶養親族であった親族が年の中途で亡くなった場合、その親族を年調減税額の計算に含めるかについては、死亡の日の現況で扶養親族であると判定されるのであれば、年調減税額の計算に含めるとしている。

3.源泉所得税関係の様式も公表

国税庁ではこのほか、定額減税に係る源泉所得税関係の様式も公表した。具体的には、「各人別控除事績簿」「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」「令和6年分年末調整に係る定額減税のための申告書」「年末調整計算シート」が掲載されている。これらの様式は、掲載日現在の様式案で、国税庁では確定版を順次掲載していく。

6月から始まる定額減税においては、まず月次調整減額を算定しなくてはならないが、進め方として

  • ①控除対象者の確認
  • ②各人別控除事績簿の作成
  • ③月次減税額の計算
  • ④給与等支払時の控除
  • ⑤控除後の事務

の順番で行う。

使い勝手が良さそうなのが、「各人別控除事績簿」。基準日在職者(受給者の氏名)欄、月次減税額の計算欄、月次減税額の控除欄、備考欄で構成されている。使用は任意だが、各人特別控除事績簿では、各人別の月次減額と各月の控除額等を管理することができる。また、国税庁から公表されたエクセルシートを使えば、同一生計配偶者と扶養親族の数を入力すると、月次減額が自動計算されるほか、控除前税額を入力すると、控除した金額や控除しきれなかった残額が自動で表示される。月次減税は、控除しきれない金額がなくなるまで繰り返す。

4.調整給付の時期

定額減税額まで税金がかかってない場合は「給付金」を受け取ることができる。この給付金を「調整給付」というが、おおよその給付開始時期は2024年8月頃からになる。準備の整った自治体から順次支給されるが、給付額に不足が生じた場合の追加給付は、2025年以降の給付になる見込み。なお、調整給付の申請方法は、各自治体で異なることがあるため、具体的には各自治体に確認されたい。

定額減税の計算については、手間がかかることから早めの対応が不可欠。国税庁の定額減税の特設サイトなどを閲覧しながら、ミスしないように進めたい。

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