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インボイス制度 令和6年に入り「お問合せの多いご質問」を6問追加

2024.03.06

はじめに

令和5年10月1日から、適格請求書等保存方式(インボイス制度)がスタートしたが、実務で戸惑うことも少なくない。国税庁ではこうした状況に対応するために「お問合せの多いご質問」を定期的に更新しており、令和6年1月に4問、2月に2問の計6問が追加され、これで24問となった。

また、既存の問⑮を改訂し、「内定者や採用面接者に対し内定者説明会会場や面接会場までの交通費等を支給する場合の取扱い」について加筆を行っている。

1.オンライン決済時の仕入税額控除に必要な要件

令和6年2月に追加された問㉓は、「金融機関の窓口又はオンラインで決済を行った際の金融機関の入出金手数料や振込手数料について、仕入税額控除の適用を受けるために、何を保存すればよいでしょうか」という質問。これに対して、原則として適格簡易請求書及び一定事項が記載された帳簿の保存を必要としつつ、金融機関における入出金や振込みが多頻度にわたるなどの事情により、全ての入出金手数料及び振込手数料に係る適格簡易請求書の保存が困難なときは、金融機関ごとに発行を受けた通帳や入出金明細等(個々の課税資産の譲渡等(入出金サービス・振込サービス)に係る取引年月日や対価の額が判明するものに限る)及び、その金融機関における任意の一取引(一の入出金又は振込み)に係る適格簡易請求書を併せて保存することで、仕入税額控除を行って差し支えないとしている。

また、問㉔には、インボイス発行事業者が「利用規約においてその対象を消費者に限定しているため、課税事業者から適格請求書の求めがあったとしても適格請求書の交付は行わないこととしてよいでしょうか」との質問を追加。これに対して、利用規約等において提供するサービスの対象を消費者に限定し、実際に事業者による利用がないのであればインボイスを交付する必要はないものの、そうした制限にもかかわらず、実際にそのサービスを利用した課税事業者からインボイスの交付を求められた場合には、利用規約等にかかわらず、消費税法上、その交付義務が生じると解説している。

2.個人事業主の2割特例の適用についても記述

令和6年1月に追加された問⑲は、これまで免税事業者だった個人事業主が、令和5年に入ってからインボイス発行事業者登録申請を行い、令和5年10月1日からインボイス発行事業者(課税事業者)となったが、この登録申請のときに「消費税課税事業者選択届出書」も提出した場合、「令和5年分の確定申告において2割特例の適用が受けられるのか」というもの。これについて解説では、「消費税課税事業者選択届出書の効果は、原則として、その提出した日の属する課税期間の翌課税期間から生じるところ、ご質問の場合、その効果は令和6年1月1日から生じるため、令和5年分については、令和5年10月1日(適格請求書発行事業者の登録日)から令和5年12月31日までの期間に行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについて申告を行うことになり、令和5年9月30日以前の期間を含まないことから、2割特例の適用を受けることができる」としている。

また、問⑳は、電気通信利用役務の提供とインボイスの保存についての質問を追加。具体的には「国外事業者との間でリバースチャージ方式の対象となる取引(インターネット広告の配信)や、消費者向け電気通信利用役務の提供に該当する取引(電子書籍の購入)を行っていますが、仕入税額控除を行うために適格請求書の保存は必要でしょうか」という質問。これについては、国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」のうち、「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、特定課税仕入れとして、当該役務の提供を受けた国内事業者に申告納税義務が課されるとしている(リバースチャージ方式)。そして、当該リバースチャージ方式により申告・納税を行う消費税額については、仕入税額控除の対象となり、適用要件としてインボイスの保存は必要なく、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能としている。

一方で、国外事業者が行う事業者向け電気通信利用役務の提供以外の電気通信利用役務の提供、例えば「電子書籍・音楽の配信」等について、仕入税額控除の適用を受けるためには、売手である国外事業者から交付を受けたインボイスの保存が必要と解説。また、国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供について、インボイスの保存がない場合に、インボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて一定割合(80%、50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることはできないが、少額特例適用を受けることはできるとしている。

問㉑は、セミナー参加費に関連するインボイスの交付方法について、また問㉒は、課税期間の途中から課税事業者となった場合、基準期間における課税売上高の取り扱いについて質問している。

3.「内定者や採用面接者に対する交通費支給」に加筆

このほか、「内定者や採用面接者に対し内定者説明会会場や面接会場までの交通費等を支給する場合の取扱い」を加筆した問⑮については、内定者のうち、企業との間で労働契約が成立していると認められる者に対して支給する交通費等については、通常必要であると認められる部分の金額について出張旅費等特例の対象として差し支えないとしている。そして、労働契約が成立していると認められるか否かは、例えば、企業から採用内定通知を受け、入社誓約書等を提出している等の状況を踏まえて判断されると説明。一方で、採用面接者は通常、従業員等に該当しないため、支給する交通費等について、出張旅費等特例の対象にはならないと解説している。

参考:「お問合せの多いご質問」に追加された6問

【令和6年1月26日公表分】

  • 問⑲ 消費税課税事業者選択届出書を提出しても2割特例の適用ができる場合
  • 問⑳ 電気通信利用役務の提供と適格請求書の保存
  • 問㉑ セミナー参加費に係る適格請求書の交付方法
  • 問㉒ 課税期間の中途から課税事業者となった場合の基準期間における課税売上高

【令和6年2月29日公表分】

  • 問㉓ 金融機関の入出金手数料や振込手数料に係る適格請求書の保存方法
  • 問㉔ 消費者に限定した取引についての適格請求書の交付義務

出典:国税庁ホームページ「通達・Q&A」ページ内「お問合せの多いご質問

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