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令和5年 年末調整はココに注意!

2023.11.13

はじめに

2023年(令和5年)も残り2カ月を切り、いよいよ年末調整の時期。令和5年分の年末調整では、2020年、2022年、2023年に行われた税制改正を受け、幾つかの注意ポイントがある。ここでは、大きく分けて3つの留意点を解説する。

1.非居住者である扶養親族の適用要件変更

税制改正の影響を受けて、令和5年分の年末調整で押さえておきたい大きなポイントは、

  • ①非居住者である扶養親族の適用要件の変更
  • ②住宅ローンの適用期間、控除率、控除期間等の見直し
  • ③扶養控除申告書の住民税に関する記載項目に『退職手当等を有する配偶者・扶養親族』『寡婦又はひとり親』欄の追加

の3点だ。

扶養親族に該当するためには、前提として「所得者と"生計を一"にする親族で、合計所得金額が48万円以下である人」という条件があるが、令和5年1月1日以降は、国外居住親族を扶養親族とするための条件が、「30歳以上70歳未満の者の非居住者」が原則的に除外されることになった。

ただし、以下の3つの要件のいずれかに該当すれば、従来どおり扶養控除の対象となる。

  • ・留学で非居住扶養親族になった人
  • ・障害者
  • ・扶養控除の適用を受けようとする居住者(親など)からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
    • ※1 国内居住親族と同じく、申告者本人と生計を一にする親族で合計所得金額が48万円以下である者という要件も満たさなければならない。
    • ※2 非居住者とは、日本国内に1年以上住所および居所を有しない者

この見直しに伴い、「給与所得者の扶養控除等申告書」の記入方法と「扶養控除の適用を受けようとする居住者(親など)からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者」の記載方法が変更された。

非居住者に該当する要件に応じて、以下のいずれかの数字を記載する。ただし、複数該当するときは、いずれかひとつを記載する。

非居住者に該当する要件に応じて以下のいずれかの数字を記載
非居住者の親族要件 記載する数字
30歳未満または70歳以上 01
30歳から70歳未満の留学生 02
30歳から70歳未満の障害者 03
30歳から70歳未満の38万円以上送金を受ける者 04

「02」の「留学により国内に住所および居住を有しなくなった者」と「04」の「38万円以上の送金を受けている者」に該当する場合、従業員は以下の証明用の確認書類を事業主に提出する必要がある。

非居住者の親族の年齢等に応じて提出する確認書類
非居住者である親族の年齢等の区分 扶養控除申告書の提出時 年末調整時
16歳以上、30歳未満または70歳以上 親族関係書類 送金関係書類
30歳以上70歳未満の留学生 親族関係書類
留学ビザ等書類
送金関係書類
30歳以上70歳未満の障害者 親族関係書類 送金関係書類
30歳以上70歳未満で年間38万円以上を送金 親族関係書類 38万円送金書類

「親族関係書類」とは、所得者との親族関係を確認できる書類。「戸籍の附票の写しなど日本国または地方公共団体が発行した書類および非居住者である親族の旅券(パスポート)の写し」「外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(非居住者である親族の氏名、生年月日および住所または居所の記載があるもの)」のいずれかの書類(日本語訳文も必要)で、申告者本人の親族であることを証するものとなる。

「送金関係書類」は、「金融機関が発行した書類(写し可)で、その金融機関が行う為替取引により非居住者である親族に支払ったことを明らかにする書類」「クレジットカード会社が発行した書類(写し可)で、非居住者である親族がそのクレジットカード会社のカードを利用して商品の購入やサービスの提供を受けたことに対する支払をしたことにより、その代金に相当する額の金銭を申告者本人から受領したことを明らかにする書類」を指し、いずれかの書類を、申告者本人がその年に非居住者である親族それぞれの生活費または教育費に充てるための支払ったことがわかるもの。

「38万円送金書類」は、「送金関係書類」のうち、申告者本人から非居住者である親族への支払金額合計が年間38万円以上であることを明らかにする書類を指す。

障害者については、扶養控除等異動申告書の「非居住者である親族」欄と、国内居住親族と同様に、C欄のチェックがあり、「障害者又は勤労学生の内容」欄に障害の状況の記載があることが必要。国内居住者であれば、障害者手帳等での確認が可能だが、国外居住者の場合、外国政府が発行した障害者手帳等では、障害者控除を受けるための条件に該当しない場合もある。税務署に確認するのが確実だ。

2.住宅ローンの適用期間、控除率、控除期間等の見直し

令和4年度税制改正を受けて、新たに住宅を新築した場合の「住宅借入金等特別控除」、いわゆる住宅ローン控除は利用できる適用期限と控除率、控除期間が見直された。

住宅ローン控除適用初年分は確定申告が必要なため、年末調整には2年目となる令和5年分から影響する。ポイントは以下の通りだ。

  • ①住宅ローン控除の適用期限が2025年までの4年間延長(※2022年1月~2025年12月末までに入居した者が対象)
  • ②控除率が1%から0.7%に引き下げ
  • ③住宅ローン控除の適用対象者の所得要件が、合計所得金額3千万円以下から2千万円以下に引き下げ
  • ④合計所得金額1千万円以下の者につき、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅の床面積要件が40平米以上に緩和

住宅ローン控除を受けるためには、取得したマイホームに2025年末までに入居しなければならない。たとえ2025年末までにマイホームの売買契約を結べたとしても、入居が2026年1月1日以降になってしまうと、住宅ローン控除は受けられなくなる。

また、住宅ローン控除の適用期間は、これまで原則10年だったが、新築住宅・買取再販の中古住宅(要件を満たしたもの)については13年、それ以外の中古住宅(既存住宅)については10年となった。ただし、2024年以降に入居する場合、住宅が所定の省エネ基準に適合していなければ、控除期間は10年となる。

築年数要件については、改正前はマンションをはじめとした耐火住宅は25年以内、木造の戸建て住宅などの非耐火住宅は20年以内だった。改正後は、昭和57年以降に建築され、新耐震基準に適合していれば住宅ローン控除の対象となり、築年数の要件が緩和される。

購入者の合計所得金額についても変更されている。改正前は合計所得金額が3千万円以下であれば住宅ローン控除を利用できたが、改正後は、2千万円以下と利用条件が引下げられている。

なお、住宅ローン控除の対象となる床面積は、50㎡以上の物件。ただし所得1千万円以下の者が、2023年までに建築確認が済んだ新築住宅を取得したときは、床面積40㎡以上で住宅ローン控除の対象となる。

3.扶養控除申告書の住民税に関する事項の記載項目

「給与所得者の扶養控除等申告書」における住民税に関する事項は、令和4年分までは16歳未満の扶養親族についてのみ記載すべきだったが、今回の改正により、所得税では扶養控除の対象にならないが、住民税のみで扶養控除の対象となる配偶者・親族について記入することになった。退職手当等を有する配偶者・扶養親族欄が追加となった背景には、所得税扶養の所得要件には退職金を含む一方で、住民税扶養の所得要件には含めないという扱いになっていることがあげられる。こうした背景から、扶養親族について「その年の退職所得を含まない所得の見積額」の情報を記載する欄が追加された。
記載内容としては、

  • ①従来どおり16歳未満の扶養親族について記入
  • ②退職手当がある配偶者・扶養親族がいる場合も記入
  • ③①・②の配偶者・扶養親族がいて、申告者本人が寡婦またはひとり親に該当する場合に、受給者本人の寡婦等の欄に〇印を記入する

最後に、令和6年分以降の年末調整から、個人住民税通知が電子化される。令和6年分以降の年末調整による給与支払報告を受けて市区町村役所から徴収される個人住民税については、従業員宛の特別徴収税額通知の電子化を選択することができる。ただし、以下の要件を満たさなければならない。

  • ・事業主がeLTAXにより給与支払報告書を市区町村に提出している
  • ・従業員本人に電磁的方法により提供することができる体制を有している

年末調整業務は担当者にとって、重要な業務の一つ。基本的な手続きの流れは変わらないものの、毎年何らかの変更点は発生するため、しっかり内容を把握しておくことが不可欠だ。

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