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国税庁 消費税基本通達を改正 インボイス制度に対応

2023.09.08

はじめに

国税庁は令和5年8月10日、同年10月1日からの適格請求書等発行制度(インボイス制度)に備え、消費税法基本通達の一部を改正した。

改正のポイントは、軽減税率制度、インボイス制度、総額表示に関する個別通達が消費税基本通達に統合されたこと。また、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(以下、インボイスQ&A)の内容を取り込んだほか、インボイス制度を踏まえての改正、令和5年度税制改正にともなう所要の改正が反映されている。

1.新設された「登録の効力」

インボイス制度を踏まえた取扱いとして新設された1-7-3の「登録の効力」については、国税庁のインボイス発行事業者の登録簿に登載された日、いわゆる登録日からその効力を有するとされ、法第57条の2第7項「登録等の通知」による通知を受けた日にかかわらず、インボイス発行事業者は、登録日以後に行った課税資産の譲渡等について法第57条の4第1項の「適格請求書の交付義務」の規定に基づきインボイスを交付することとなると示された。

登録日から登録の通知を受けた日までの間に行った課税資産の譲渡等については、すでに請求書等の書類を交付している場合には、登録に関する通知を受けた日以後に登録番号等を相手方に書面等(既に交付した書類との相互の関連が明確であり、当該書面等の交付を受ける事業者が同項各号に掲げる事項を適正に認識できるものに限る)で通知することにより、これらの書類等を合わせてインボイスの記載事項を満たすことができるとされている。

2.「共同相続があった場合の登録の効力」について

このほか、インボイス制度を踏まえて新設されたのが1-7-5の「共同相続があった場合の登録の効力」についてである。相続において、2人以上の相続人がいるときは、相続財産の分割が行われるまでの間は、インボイス発行事業者である被相続人の事業を継承する相続人は確定していないため、これらの相続人(インボイス発行事業者を除く。以下1-7-5において同じ)は、法第57条の3第3項のインボイス発行事業者が死亡した場合の手続きに規定する「相続により適格請求書発行事業者の事業を継承した相続人」に該当するものとして取り扱うとされた。みなし登録期間の末日までに相続財産の分割が実行された場合においては、インボイス発行事業者である被相続人の事業を継承していないこととなった相続人は、相続財産の分割が実行された日以降同項の規定が適用されないことから、同日以後はインボイス発行事業者とみなされないことに留意することも示された。

インボイスQ&Aの反映としては、媒介者等を介して国内において課税資産の譲渡等を行う場合の意義(問48)については、1-8-9において、令第70条の12第1項の「媒介者等による適格請求書等の交付の特例」に記された「媒介者等を介して国内において課税資産の譲渡等を行う場合」は、委託販売のように課税資産の譲渡等を第三者に委託している場合のほか、課税資産の譲渡等の交付を第三者に委託している場合にもこれに含まれるとしている。

3.14件のパブコメ意見は改正案に反映されず

これら改正後の取扱いについては、令和5年10月1日からのインボイス制度のスタートと同時に適用され、次に掲げる法令解釈通達は同日に廃止される。

  • ① 平成16年2月19日付課消1-8ほか5課共同「事業者が消費者に対して価格を表示する場合の取扱い及び課税標準額に対する消費税額の計算に関する経過措置の取扱いについて」(法令解釈通達)
  • ② 平成28年4月12日付課軽2-1ほか5課共同「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について」(法令解釈通達)
  • ③ 平成30年6月6日付課軽2-8ほか5課共同「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関する取扱通達の制定について」(法令解釈通達)。

なお、今回の見直しに関しては、今年6月から行われてきたパブリックコメントが反映されるか関心が高かったが、最終的に14件の意見が提出されたものの、改正案からの修正にまでには至らなかった。

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