日税連 税理士制度の見直しに伴い事務所運営に関するFAQを公開
2023.07.07
はじめに
日本税理士会連合会(日税連)はこのほど、令和4年度の税理士法改正による「事務所の設置」に係る税理士法基本通達の改正に伴い、事務所の概念及び判定要素等についての「税理士事務所FAQ」を公開した。
この「税理士事務所FAQ」は、令和2年4月に策定した「税理士の業務とテレワーク(在宅勤務)~新型コロナウィルス感染防止対応版~」を全面改訂する形でFAQとして取りまとめたもので、事務所規定の見直しに伴う新たな事務所の考え方について解説している。
また、日税連では、国税庁が公表している「税理士制度のQ&A」と併せて確認するように求めている。
1.どこを税理士事務所の所在地にするかの留意点
国税庁の「税理士法Q&A」では、「税理士業務を行うための事務所」について、『税理士業務の本拠をいい、税理士業務の本拠であるかどうかは、委嘱者等に示す連絡先など外部に対する表示に係る客観的事実によって判定する』と解説。「外部に対する表示」については、『例えば、看板等物理的な表示、ウェブサイトへの表示、契約書等への記載などが含まれます』としている。
この外部に対する「事務所の表示」について「税理士事務所FAQ」では、税理士業務の委嘱者、税理士会や行政官庁などに限定されない、広く一般の者を含むとし、『看板のほか、名刺や封筒に所在地などの連絡先を記載することや、表札・郵便受け等に「税理士事務所」や「税理士法人」と表記すること』が含まれると解説している。
また、「登録する事務所の所在地を選定する上での留意点」としてFAQでは、『どのような場所を選定し登録しても、外部に対する表示がなされていれば登録不可にはならないものと考えられる』としており、税理士等が自ら管理できない場所は、「税理士業務の本拠」となり得ないため、税理士事務所と認めることはできないと考えられると説明している。
具体的な事例として、『行政官公署等の所在地、他人が経営する喫茶店等や、住所借り事務所等で日本郵便等の転送サービス等の利用を前提とした場所を事務所として選定することは、税理士事務所が税理士自らの管理下とされるべき観点から適当ではないと考えられる。税理士等が自ら管理できない場所には、例えばメタバース上に設置された事務所などのいわゆるバーチャル事務所が含まれる』としている。
さらに、税理士事務所は自己所有または賃貸借契約など、自らの管理下とする場所であることが求められ、これは、親族等が所有又は賃貸借しているものを使用貸借等する場合も含むとしているが、『オフィス環境を他者と共有する形式で事務所スペースを独占的排他的に使用することができない、いわゆるコワーキング(co-working)スペース等の利用権契約に基づき使用されている場合には、本拠とすることが不適当』とも解説している。
2.「二ヶ所事務所の禁止規定」の趣旨に注意
このほか、「税理士事務所FAQ」では、「二ヶ所事務所禁止規定関係」について、これまでの趣旨は、
- ①法律関係を明確にする上で便宜であること
- ②個人の監督能力を超えて業務の範囲を拡大することを事務所の面から規制すること
の2つとされてきたが、新通達 40-1による事務所概念では、「法律関係の明確化」が主たる規定趣旨のため、考え方に一定の変化があると考えられるとしている。
そのため、『使用人等による非税理士行為等抑止の問題については、法第41条の2の使用人等監督義務規定の枠で対応されることになり、事務所内部管理のあり方が強く問われる』としており、この点についての詳細は、「税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針」を参考にするように求めている。