フリーランス保護新法が成立 政府「青色専従者は従業員とならない」
2023.06.13
はじめに
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス保護新法」が2023年4月28日に行われた参議院本会議で可決・成立した。同法は、フリーランスとして安定的に働ける環境を整備することを目的としたもので、仕事の範囲や報酬その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずるもの。施行日はまだ決まっていないが、交付日から1年半以内に施行されることが法律で定められていることから、2024年10月までには施行される。
1.働き方の多様化の進展に鑑み制定
フリーランス保護新法は、働き方改革によって増加する、フリーランスと企業間の力関係における不当な取引慣行等に基づく取引を防止し、フリーランスの社会的な保護を促進することを目的としている。主に、
- ①業務委託時の取引条件明示
- ②報酬支払の適正化
- ③継続的取引における禁止行為
- ④就業環境の整備
- ⑤解除の制限
について定める。
具体的に同法が施行されると、企業はフリーランスに業務を委託する際には、仕事の範囲や報酬額を書面、メールであらかじめ明示すること、仕事の成果物を受け取ってから60日以内に報酬を支払うことが義務付けられる。
企業がフリーランス保護新法に違反すると、公正取引委員会、中小企業庁長官または厚生労働大臣が違反行為について、助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令がなされ、命令違反及び検査拒否等に対しては、50万円以下の罰金が科される。
2.フリーランス保護新法は企業側の行為を規制
フリーランス保護新法は基本的に、フリーランスと企業との取引における企業側の行為を規制するもの(同法3条~5条)。同法における各用語の定義については、以下のように定められている。
「特定受託事業者」
業務委託の相手方である事業者であって、次のいずれかに該当するもの。
- ・個人であって、従業員を使用しないもの
- ・法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者)がなく、かつ、従業員を使用しないもの
「業務委託」
次に掲げるいずれかの行為。
- ・事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む)又は情報成果物の作成を委託すること
- ・事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む)
「特定業務委託事業者」
特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、次のいずれかに該当するもの。
- ・個人であって従業員を使用するもの
- ・法人であって二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの
前述の内容から、一般的な複数名の社員が所属する企業が、個人・法人を問わず単独で業務を行っている者、いわゆるフリーランスに対して、なんらかの業務を委託する場合には、ほとんどの場合にフリーランス保護新法による規制を受けることになると考えられる。
3.「従業員」の考え方はガイドライン作成
一方で、家族として仕事を手伝っている者や青色専従者が含まれるのかという問題も絡んでくるが、この点、同法案を審議してきた国会の与党からの質問において、政府担当者は「同居の親族が働いている場合は、青色専従者の場合を含めて、基本的には従業員を使用しているとは言えないと整理する方向」としている。また、従業員のいる法人を経営している社長が、新たに自身以外に役員・社員がいない法人を設立すれば、社員ゼロの法人で受けた仕事は法律の保護の対象になるかについては、「該当することになると考えている」と回答している。
こうしたフリーランスなのかの判断については、判断基準等をガイドライン等で示し、「通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること」に該当する著しく低い報酬額等についてもガイドライン等に定めていく予定としている。
フリーランスと企業間の取引における力関係を規律する法律は既に、独占禁止法やその補完法の下請代金支払遅延等防止法(下請法)が既に存在するが、下請法では、資本金1千万円以下は法律が及ばないため、フリーランスの保護が行き届いていない部分があった。