法人税の実地調査件数が回復傾向 令和3事務年度は163.2%増加
2023.05.26
はじめに
国税庁によると、令和3事務年度(令和3年7月~令和4年6月)の法人税等の調査件数は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により過去最少だった前事務年度より163.2%増の4万1千件だった。令和4事務年度も残り数カ月だが、税務調査件数はコロナ前に戻りつつあり、7月の人事異動後の課税当局の動きに関心が集まっている。
1.非違件数も大幅に増える
令和3事務年度の法人税の実地調査件数は、新型コロナ感染症拡大の影響をうけたものの、前事務年度の2万5千件から163.2%増え、4万1千件だった。
このうち非違件数は、前事務年度より155.4%増え3万1千件、うち不正計算があったものが同140.1%増の9千件といずれも増加した。
申告漏れ所得金額については、同114.0%増え6,028億円、このうち不正所得金額は同151.2%増の2,208億円、追徴税額は同119.1%増の1,438億円だった。
不正1件当たりの不正所得金額については、同107.9%増え2,383万円と過去最高。また調査1件当たりの追徴税額は同73%で352万8千円と減少したものの、過去最高だった前年度の483万4千円に次いで多い金額だった。
法人税の実地調査の状況
2.不正発見割合の高い業種
不正の発見割合の高い業種については、前事務年度ではトップ10圏外だった「その他の道路貨物運送」が最も高く不正発見割合は32.8%、不正1件当たりの不正所得金額が2,772万1千円だった。次いで、前事務年度は4位だった「医療保険」が2位で同31.2%、同913万6千円、3位は前事務年度7位の「職別土木建築工事」で同29.6%、同1861万7千円となっている。
不正発見割合の高い10業種(法人税)
「不正1件当たりの不正所得金額の大きな業種」については、前事務年度は5位だった「情報サービス、興信所」が1位で7,288万7千円、2位が「自動車・同部品卸売」の6,472万3千円、3位が「鉄鋼製造」の6,369万6千円となっている。
不正1件当たりの不正所得金額の大きな10業種(法人税)
3.実地調査以外の「簡易な接触」で実績
国税庁では、調査の必要度の高い法人に絞って実地調査を行う一方で、申告内容の確認や誤り等が想定できる法人に関しては、是正を目的とした実地調査以外の手法を用いて接触する「簡易な接触」を実施している。
税務署所管法人を対象に行った簡易な接触件数は、前事務年度の6万8千件から6万7千件に減少、申告漏れ所得金額は、76億円から116.6%増え88億円となっている。追徴税額は62億円から167.5%増の104億円と大幅に増えた。
接触率については3.3%で、平成29年から令和3年までの5年間の接触率は18.5%(法人税・消費税)となっている。
簡易な接触の状況
4.大企業向けに「リモート調査」を展開
なお、国税当局では申告内容や調査事績等各種データを最大限に活用するなど、調査選定の高度化に向けた取組を行うとともに、納税者の理解と協力の下、調査事務の効率化を進める観点から、令和2年7月より大規模法人を対象にWeb会議システムなどを利用した「リモート調査」を実施。令和4年10月からは、国税庁の機器・通信環境を利用したリモート調査を試行的に開始している。調査件数などは公式には発表されていないが、着実に次世代向けの調査体制を築いている。