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国税庁が10月から一部大規模法人のリモート調査開始

2022.10.26

はじめに

国税庁は10月から、一部の大規模法人を対象にWeb会議システム等を活用したリモート調査を実施している。対象法人は、全国に500あるといわれる国税局調査部所掌法人。国税庁では、これまでに納税者の機器・接続環境を利用したリモート調査を必要に応じて実施してきたが、今回は大規模法人を対象に、国税庁の機器・通信環境を利用したリモート調査を試行的に実施する。

1.未来型の本格的な「リモート調査」

国税庁は10月から国税局調査部が所掌する一部法人を対象に、調査官が法人に訪問しない「リモート調査」を試行している。

国税当局では令和2年7月からリモート調査を実施しているが、必ず調査官が法人に臨場し、法人のパソコン等を利用してWEB会議システムで行う「臨場型リモート調査」を行ってきた。今回、試行的に実施するリモート調査は、調査官が法人に臨場せず、国税局から専用のWEB会議システムを通じて行う、未来型の本格的な「リモート調査」となる。

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出典:国税庁の機器・通信環境を利用した調査の実施(試行)について│国税庁(令和4年9月公表)

国税局の調査部は、資本金1億円以上の大規模法人を専門に調査する税務当局の精鋭部隊。調査官の中でもエリートが集まった組織だ。東京国税局には調査第一部~調査第四部が設けられ、それぞれの部には「課」「部門」に分かれ、分掌事務を持ち調査を行う。例えば、調査第一部では、「調査管理課」「広域情報管理課」「特別国税調査官」「調査審理課」「国際調査課」「国際情報課」「調査開発課」などがある。

今回、リモート調査を実施するのは、資本金40億円以上の一定の大規模法人。経理事務などのバックオフィス業務においてデジタル化が進んでおり、電子帳簿保存法(電帳法)にも対応している約500法人が対象だ。

これら大規模法人には、調査の前に調査官からリモート調査に関する説明が行われ、リモート調査を希望する場合、法人は「リモート調査の実施に関する同意書」を提出する。同意書は、国税庁ウェブサイトに掲載されており、そのPDFをe-Taxで提出する。

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出典:リモート調査の実施に関する同意書│国税庁HP

リモート調査は、WEB会議システム「Webex」 で聴取等を行い、帳簿や証憑等の確認作業はクラウドストレージに直接アクセスし、確認する。

つまり、調査官も経理担当者もリモートでの対応が可能となり、税務調査における効率化に繋がると見ている。ただ、途中で現地調査が必要だと判断された場合は、法人に臨場した調査に移行する。

2.顧問税理士もリモート調査に同席

では、代理権限書を当局に出している法人の顧問税理士はどのように調査に立ち会うことになるかというと、税理士もリモートで調査に同席することになる。

つまり、リモート調査が始まれば、調査官は国税局、法人本社の担当者は自宅、その他の法人担当者はオフィスや工場、税理士は事務所からといったように、それぞれが全く別の場所から税務調査に対応することになるわけだ。

大企業の税務調査は、税務署所管法人とは異なり、膨大な資料を分析する必要があり、時間と人数がかかるのが常だ。そのため、コロナ禍においては、企業側から「調査官の人数を減らしてほしい」などの要望が寄せられていた。リモート調査になれば、企業側も調査対応の人員及び時間の短縮にもつながる可能性が高く、規模が大きいほど歓迎ムードという。

国税局では、Withコロナの時代にあって、税務調査の質や量を落とさずに実施するため、リモート調査を積極的に拡大する方向で、これまで書面や対面により多くの手続きを踏んで行っていた金融機関への預貯金照会や、税務調査における必要な資料の提出についてオンライン化を進めている。国税当局では、電子帳簿保存法の普及・定着なども視野に入れながら、最終的には中小企業にもリモート調査を広げていく計画だ。

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