国税庁 令和5年度予算は前年度より約301億円増
2022.10.13
はじめに
国税庁から令和5年度の予算概算要求及び定員・機構要求が公表された。予算概算要求額は6,555億4,000万円で、令和4年度当初予算額より301億2,700万円増加。主に納税者の利便性向上、国際化対応経費の増加が目立っており、当局が特に力を入れている業務が反映された格好だ。なお、デジタル化対応などの情報化経費は、前年度からデジタル庁から要求されている。
1.納税者の利便性向上、国際化対応費の増加目立つ
令和5年度の予算概算要求額は、同4年度当初予算比4.8%増の6,555億4,000万円で、その内訳は「庁局署一般経費」が同比3.3%増(12億9,700万円増加)の614億4,700万円と全体の9割を占める。この中には、東京国税不服審判所横浜支所や横浜中税務署、東京・中野税務署等の移転関係経費10億円も含まれている。
このほか「納税者利便向上経費」は同4年度当初予算額より3億7,400万円増加の29億8,800万円で、この主な内容は、「e-Taxの利用促進に向けた取組等に必要な経費」が8億円、「電話相談センターの運営経費」が21億円となっている。
国際的な租税回避等に対応するための「国際化対策経費」は同7,800万円増加の11億3,500万円で、この数年の当局の国際化対応が反映された格好だ。このほか、「職場環境整備・安全対策経費」については同6億4,500万円増加の86億9,000万円となっている。
なお、これまで国税庁が要求していた政府情報関連システム予算は、昨年度よりデジタル庁からされており、「情報化経費」「e-Tax経費」等は国税庁の予算概算要求には含まれていない。
2.定員・機構要求では消費税不正還付の監視の目を強化
国税庁では予算概算要求に合わせて令和5年度の機構・定員要求も公表しているが、消費税不正還付や消費税インボイス制度の円滑な導入、国際的な租税回避等への対応等を目的に、1,192人の増員要求が行われた。
機構要求では、税務行政のデジタル化対応として、国税庁にサイバーセキュリティ対策や税務行政のDX化を推進するための審議官、東京国税局には「情報システム部(仮称)」の新設を要求している。
東京国税局では、全国レベルの情報システムの管理・運営を行っているため、同局総務部の情報システム課を部に独立させたいと考えている。
このほか、「消費税の不正還付や国際的な租税回避等への対応」については、国税庁の課税総括課消費税室に輸出免税店における輸出免税制度を悪用した不正還付を監視していく課長補佐1人の増設を要求。東京国税局の徴収部に特別徴収官1人、主要署に消費税専門官14人の増設を要求している。審理体制の充実にも力を入れており、沖縄国税事務所には新たな業務を行う審理官ポストを要求しているほか、主要税務署の審理専門官として4名の増設を求めている。
こうした増員の一方で、同5年度の国税庁定員合理化目標数は1,141人であったことから、同5年度の定員の純増要求数は51人となった。
令和5年度の主な機構要求
1.税務行政のデジタル化への対応
- 【国税庁】審議官
- 【国税局】情報システム部(仮称)(東京)
2.新たな国際課税ルールへの対応
- 【国税庁】国際企画官
- 【国税庁】課長補佐
3.消費税不正還付や国際的な租税回避等への対応
(1)消費税不正還付への対応
- 【国税局】特別国税徴収官(東京)
- 【税務署】消費税専門官
(2)経済取引のグローバル化・デジタル化等による調査・徴収事務の複雑化への対応
- 【国税庁】課長補佐
- 【国税局】課長補佐
- 【国税局】情報技術専門官
- 【国税局】国際税務専門官
- 【国税局】査察機動専門官
- 【税務署】特別国税調査官
- 【税務署】統括国税調査官
(3)審理体制の充実
- 【国税局】審理官(仮称)(沖縄)
- 【税務署】審理専門官
4.日本産酒類の振興への対応
- 【国税局】酒類業振興専門官
5.業務センター室拡充への対応
- 【国税局】統括国税管理官(東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)
- 【国税局】主任国税管理官
6.その他
- 【国税庁】課長補佐
- 【国税庁】鑑定企画官補佐
- 【国税局】資料総括課(大阪)
- 【国税局】課長補佐
- 【国税局】源泉納付指導専門官
- 【税務署】評価専門官
(参考)再任用短時間勤務職員用の機構
- 【税務署】特別国税調査官
(注)国税局主要ポストについては、国税局名を記載。