2021年度のふるさと納税 過去最高の8,302億円 制度スタート時の100倍超に
2022.09.12
はじめに
2021年度(2021年4月1日から2022年3月31日)のふるさと納税による寄附総額が、過去最高の8,302億円に上ったことが総務省の調べでわかった。制度が始まった2008年度の100倍超となり、寄附件数も4,447万3千件で過去最高を記録した。
1.寄附金の最高額は北海道紋別市
2021年度のふるさと納税による寄附額は、前年度の6,724億5千万円から23%増え8,302億4千万円と、2年連続で過去最高を更新した。件数に関しても3,488万8千件から27%増えて、過去最高の4,447万3千件を記録した(図1参照)。
(図1)ふるさと納税の受入額及び受入件数の推移(全国計)
- ※ 受入額及び受入件数については、法人からの寄附金を除外し、ふるさと納税として認められる寄附金のみを計上している。
- ※ 平成23年東北地方太平洋沖地震に係る義援金等については、含まれないものもある。
出典:ふるさと納税に関する現況調査結果(概要)│総務省ホームページ
寄附金を最も多く集めたのは、北海道紋別市の152億9,700万円で、宮崎県都城市が146億1,600万円、北海道根室市が146億500万円と続く。
【ふるさと納税受入額の多い5団体】(令和3年度)
- 1.北海道 紋別市 152億9,700万円 110万5,051件
- 2.宮城県 都城市 146億1,600万円 69万5,351件
- 3.北海道 根室市 146億500万円 77万4,308件
- 4.北海道 白糟町 125億2,200万円 82万7,301件
- 5.大阪府 泉佐野市 113億4,700万円 89万4,137件
ふるさと納税は、地域を活性化する狙いで2008年度に始まった。自己負担額の2千円を除いた全額が所得税(復興特別所得税を含む)及び個人住民税から控除される。2015年度に控除の拡充や手続きの簡素化があり、利用者が急増した。
ただ、ふるさと納税を利用して控除できる税額には上限があり、それを超えると自己負担になる。控除の上限額は所得税・住民税でそれぞれ異なり、所得税が総所得金額の約40%、住民税は総所得金額の約30%となっている。住民税は基本分だけでなく「特例分」の控除もある。
ちなみに、総務省では、ホームページに控除上限額についての寄附金控除額の計算シミュレーションを掲載している。
- ※1「共働き」は、ふるさと納税を行う方本人が配偶者(特別)控除の適用を受けていないケースを指します。(配偶者の給与収入が201万円超の場合)
- ※2「夫婦」は、ふるさと納税を行う方の配偶者に収入がないケースを指します。
- ※3「高校生」は「16歳から18歳の扶養親族」を、「大学生」は「19歳から22歳の特定扶養親族」を指します。
- ※4 中学生以下の子供は(控除額に影響がないため)、計算に入れる必要はありません。例えば、「夫婦子1人(小学生)」は、「夫婦」と同額になります。また、「夫婦子2人(高校生と中学生)」は、「夫婦子1人(高校生)」と同額になります。
(表:総務省ホームページ「ふるさと納税のしくみ」から作成)
2.都市部の税財源流出を問題視する声も
利用者が増える裏側では、寄附金を集めたい自治体が、豪華な返礼品を用意するケースが急増。総務省は2019年度の制度改正で、返礼品を寄附金の3割以下の地場産品に限り、全経費は5割以下と定めた。違反する自治体は制度から除外し、寄附しても手厚い特例を受けられないようにした。
2021年度の寄附に対する返礼額の割合は全体で27.3%、全経費の割合は46.4%となっている。
2021年1~12月の寄附による2022年度の住民税控除額は5,672億円と、前年度に比べて28%多く、適用者数は31%増の740万人といずれも過去最高だった。
住民税控除額が最も多かった都道府県は、東京都内が1,428億円。次いで、神奈川県の595億円となっている。
市区町村で最も多いのは横浜市で230億円。次いで名古屋市が143億円、大阪市が123億円と都市部ほど税収減となっている。ふるさと納税を利用する納税者が増えることで、控除する自治体はその分だけ税収が減るため、都市部の税財源の流出を問題視する声も少なくない。