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令和3年分の個人事業主の消費税納税額は増加 還付申告急増で調査厳しく

2022.08.23

はじめに

国税庁はこのほど、消費税の確定申告状況を公表した。個人の消費税申告件数は例年並みだったが、注目は還付申告が急増したこと。実は、消費税の還付申告をすると、課税当局は還付内容について厳しくチェックする。それにより、今年は消費税調査が増えそうだ。

1.10年間で約170%増加

個人事業主の令和3年分の消費税申告状況が明らかになった。それによると、申告件数は過去10年を通じて大きな変動はないものの、前年の112万4千件より1%増え、113万5千件だった(図表)。

<図:令和3年分 個人事業主の消費税の確定申告状況の推移>

個人事業主の消費税の確定申告状況の推移

出典:国税庁資料「令和3年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」より

申告納税額は、前年よりも1.3%、金額として約80億円増加し、6,315億円だった。この数字は、過去10年で最高額となった。10年前は税率5%だったことから、申告納税額も3,600億円台。平成26年4月1日から税率が8%に変更されると5,000億円台に増加。平成28年からは5,900億円台を推移してきた。税率が10%及び軽減税率が導入された令和元年10月以降は、ついに6,000億円台に突入、昨年は6,235億円まで増加していた。つまり、個人事業主の消費税の申告納税額はこの10年で約170%増となっている。この数字は、物価が上昇すれば自然と増えることが確実で、令和4年分はさらに増加することが見込まれる。

2.還付申告が急増した理由

令和3年分の消費税申告状況で注目されるのが、還付申告が急増したこと。過去10年を見ても3万件から4万件以下だったものが、令和3年分は8万5千件に急増している。これは、コロナ禍の影響で、従来は消費税還付が発生しなかった個人事業主も、多額ではないにしても還付になったものと考えられる。飲食業などは売上が大幅に減少しているなか、店舗家賃等の負担も大きく、還付になるケースは多い。ちなみに、令和2年分も6万6千件とコロナ禍前と比べ増加している。

実は、消費税の還付申告に関しては、この数年、税務署の調査が厳しくなっているのをご存じだろうか。

消費税調査は一般的に、法人税等との同時調査を行う。しかし、この数年、還付案件については、消費税調査の専門部隊が税務署の管轄を超えて広域調査を実施している。例えば、東京国税局管内であれば、東京上野税務署には「消費税専門官」が配置され、横断的な調査で実績をあげている。

還付金額にもよるが、一般的には署の還付処理担当者から文書照会などが行われ、初回の還付申告または高額還付申告については、納税者に対して文書照会を行い、必要があれば消費税還付額に対する調査に移行する。この場合は、法人税等と同時に調査を行う場合と消費税の還付金額に対してのみの調査に分かれる。国税OB税理士は「最近の消費税還付事案の調査では、文書照会もなく調査依頼してくることも少なからずある」と指摘する。 令和3年分は還付申告が多かったことから、税務署の眼も消費税に向けられる。これからの消費税調査には十分に注意して対応していきたい。

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