納税者が圧倒的に負ける税金の争い 裁判では僅か6.5%、審査請求の認容割合は13に過ぎない
2022.07.28
はじめに
国税庁から令和3年度における税務訴訟及び審査請求の概要が公表された。それによると、税務の争いにおいては、圧倒的に国税当局に軍配が上がり、税務訴訟で納税者側が勝訴したのは僅かに6.5%。審査請求事案であっても、納税者の認容割合は13%に過ぎない。
1.約9割が裁判所で争うまでに至っておらず
国税に関する処分に不服があるときの納税者救済制度として、処分庁に対して調査を再度行うように要求する「再調査の請求」と、国税不服審判所長に対して不服を申し立てる「審査請求」、裁判所に「訴訟」を提起することができる。
国税庁はこのほど令和3年度の税務訴訟における概要を発表した。それによると、令和3年度の訴訟発生件数は187件で、前年度と比べ13.3%の増加となった。
訴訟の発生状況
出典:令和3年度における訴訟の概要|国税庁ホームページ
訴訟終結件数に関しては、従前からの持越しなどもあり199件となっており、このうち税務当局が敗訴したものは13件(一部敗訴6件、全部敗訴7件)だった。割合にしてわずか6.5%に過ぎない。
訴訟の終結状況
出典:令和3年度における訴訟の概要|国税庁ホームページ
その内容を見てみると、棄却が158件、却下が17件とほぼ裁判所へ提訴した段階で、88%が門前払い、取下げまで入れると約9割が裁判所で争うまでに至っていない。
2.審査請求件数は増加も認容割合は低空飛行
また、国税庁は令和3年度における国税不服審判所への審査請求に関する概要についても公表した。
それによると、審査請求の件数は2,458件で、前年度と比べ9.9%の増加している。
出典:令和3年度における審査請求の概要|国税庁ホームページ
最も多いのが消費税の834件、続いて所得税の770件、法人税の538件となっており、これら3税目で8割を占めている。そもそも、税収においても、この3税目で8割超を占めるのだから、妥当な割合と言える。
この審査請求の処理件数は2,282件となっており、このうち納税者の主張が何らかの形で受け入れられた「認容件数」は、一部認容が137件、全部認容が160件の合計297件となっている。実に処理件数の13%に過ぎない。
審査請求の発生状況
出典:令和3年度における審査請求の概要|国税庁ホームページ
審査請求の処理状況
出典:令和3年度における審査請求の概要|国税庁ホームページ
国税不服審判所では、審査請求の処理について納税者の正当な権利利益の救済を図るため、標準審理期間を1年と定めており、令和3年度の審査請求の1年以内の処理件数割合は92.6%となっている。ちなみに、再調査の請求について国税庁は、「簡易迅速な手続により納税者の正当な権利利益の救済を図るため」に、標準審理期間を3ヵ月に定めている。
現在、わが国においては、税金に関する納税者救済制度はかなり充実しているものの、前述のように税務当局との争いにおいては、ほとんどが税務当局側に軍配が上がっている。この傾向は昔から変わりがないが、今後は、税務訴訟に詳しい弁護士が増えることや、関与税理士の税務訴訟に関する意識向上で、納税者の勝訴率や審査請求における認容割合が上がることが期待される。