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生前贈与にメス!? 令和5年度税制改正で贈与税の見直しも

2022.03.16

はじめに

政府が近い将来、相続・贈与の一体化に踏み切る可能性が高い。令和4年度税制改正では実施されなかったが、与党税制改正大綱には2年連続で見直す方向性が示されたからだ。早ければ令和5年度税制改正での見直しも噂されている。

1.「生前贈与が使えなくなる」という危惧も

税理士の間だけでなく、富裕層の間でも「生前贈与が使えなくなるのでは」との声が聞こえてくる。事の発端は、与党の令和3年度税制改正大綱に「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」と記述されたためだ。

税理士の間では、令和4年度税制改正に具体的な見直し案が盛り込まれる可能性が高いと噂されてきたが、蓋を開けてみれば、令和4年度改正では手を付けずに終わった。

しかし、与党税制改正大綱をよく見ると、「諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある」と今後も継続検討していくことが盛り込まれている。

つまり、今回は具体的には進めないが、まだ贈与税の見直しについては「火は消えてはいない」ということだ。更に言うなら、令和4年度税制改正大綱には、令和3年度よりも一歩踏み込んだ形で、贈与税の見直しについて触れられている。では一体、どういった形で、贈与税にメスが入れられるのだろうか。

相続に詳しい税理士によれば、相続発生前に行われた一定期間の生前贈与を相続税の課税対象にする仕組みに変更される可能性が高いと言う。現行制度では、相続発生から「3年以内」の生前贈与は、贈与がなかったものとする「持ち戻し」のルールがある。しかし、この「3年以内」の期間について、海外並みの10~15年以内に延長することも考えられているというのだ。

2.どうなる!? 相続税と贈与税の一体化

また令和4年度税制改正大綱にも強調されたように、1人当たり年110万円の非課税枠を利用する「暦年贈与」の撤廃も取り沙汰されている。

暦年贈与は、年間110万円以内の非課税枠を利用しながら、子や孫などに資産移転を図るもの。110万円を超える場合は、超過した部分の税金を納税する必要がある。

また、相続時精算課税は60歳以上の父母、祖父母から18歳以上の子、孫への合計贈与額が非課税枠(特別控除)の2,500万円以内なら、何回贈与しても贈与税が掛からないとうもの。2,500万円を超える部分にかかる税率も一律20%で済む。

現行では、贈与による財産の移転時期を調整することにより、贈与税を納めず、子や孫などの次世代に、財産を渡すことができる。しかし、これを税制改正大綱では「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する」とあるように、相続で財産を渡しても、贈与で財産を渡しても、かかる税金の金額を同じにするとなると、生前贈与に節税はなくなるということになる。これが「相続税と贈与税の一体化」だ。

令和4年度税制改正大綱には、贈与税の基礎控除110万円を活用した暦年贈与が「相当に高額な相続財産を有する層」にとって有利な制度であり、「格差の固定化」に繋がり得ることを示唆していると明記されている。何れにしろ、贈与税に関しては遅かれ早かれメスが入る可能性が高い。そのため、生前贈与がダメになる前の「駆け込み贈与」を検討する納税者が増えている。

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