相続の高額マンション節税 「総則6項」の適用で最高裁が逆転判決の可能性も
2022.02.18
はじめに
相続税対策として一時期注目を浴びた高額マンション購入による節税、いわゆる「タワマン節税」だが、近年、税務署が厳しい目を向けている。特に、「財産評価基本通達6項(総則6項)」によってタワマン節税を否認するケースが出てきており、法廷で争われるケースも少なくない。こうした中、地裁・高裁において課税当局に軍配が上がっていた争いに対して、最高裁が口頭弁論を開催することを決め、逆転判決になるのではないかと注目を集めている。
1.高裁判決が見直される可能性
最高裁第三小法廷(長嶺安政裁判長)は先頃、高額マンションの相続を巡り、総則6項の適用の是非が争われている訴訟で、納税者からの上告審を受けて、3月15日に口頭弁論を開催することを決めた。
同訴訟では、地裁・高裁ともに課税庁の総則6項の適用を認める判決を下していた。しかし、最高裁の口頭弁論開催は、下級審の判断の変更に必要な手続きとも言われ、高裁判決が見直される可能性が高くなった。
総則6項には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」とある。つまり、財産評価基本通達に基づいて適法に評価した財産でも、「著しく不適当」と国税庁長官が判断した場合、財産評価基本通達とは異なる評価方法により財産を評価することを認めている。いわゆる、お上の判断で評価方法を変更しても構わないという"伝家の宝刀"なのだ。
2.地裁・高裁判決の中身とは
この争いは、平成24年6月に94歳で亡くなった被相続人の所有するマンション2棟の評価額について、相続人側が出してきた評価額を課税当局が各不動産の価額につき評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められるとして、課税当局が否認したことによるもの。
相続人側は路線価からマンション2棟の評価額を約3億3,000万円としていたが、マンション2棟の取得価格は、A不動産を8億3,700万円(銀行借入6億3,000万円)で購入、B不動産を5億5,000万円(銀行借入3億7,800万円、個人借入4,700万円)で購入し、合計で13億8,700万円だった。
課税当局が不動産鑑定をしたところ、マンション2棟の評価額は約12億7,300万円。そのため評価は適当ではないと判断、相続人に2億円以上の追徴課税処分をした。
東京地裁は特別の事情がある場合には、路線価以外の合理的な方法で評価することが許されると指摘。そして、近い将来に起こり得る相続において、相続税の負担軽減を目的としたマンション購入と認定。総則6項を適用した課税当局の主張を認めた。
地裁では、特別の事情があるかどうかに関して、「通達評価額は、それぞれ鑑定評価額の約4分の1の額にとどまっている」とした。そして、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に基づき算定する不動産の正常価格は、基本的に二つの不動産の客観的な交換価値(相続税法22条に規定する時価)を示すものと考えられることなどから、これら二つの不動産の通達評価額が相続開始時における二つの不動産の客観的な交換価値を示しているとは言い難く、二つの不動産の相続税法22条に規定する時価は、鑑定評価額で判断するのが適当だとするような判断を下している。この判断は、東京高裁も支持した。
こうした地裁・高裁の判決に今回、最高裁が口頭弁論を決定したことは、総則6項の適用について、何らかの指標を出す可能性が高い。つまり、「伝家の宝刀」の抜きどころを最高裁が示すと考えられる。「伝家の宝刀」はむやみやたらに適用されることは許されない。最高裁がどういった判決を下すのか注目される。