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令和4年度 与党税制改正大綱が決定 ~電帳法の電子取引保存義務化は2年宥恕、税理士制度を見直し等~

2021.12.14

はじめに

自民、公明両党は12月10日、2022年(令和4年)度与党税制改正大綱を決定した。賃上げした企業に適用する優遇税制について控除率を中小企業は最大40%、大企業で最大30%に引き上げる。納税環境整備においては、電子取引制度に係る宥恕措置の設置、消費税のインボイス制度、税理士制度の見直しなどが盛り込まれた。

1.目玉は、経済再生に向けた賃上げ税制の見直し

自民、公明両党が与党政策責任者会議を開き、令和4年度税制改正大綱を決定した。

今回の目玉は、経済再生に向けた賃上げ税制の見直し。現在の賃上げ優遇税制は、中小企業向けの控除率が最大25%、大企業向けの控除率が同20%だが、中小企業は最大40%、大企業は同30%に引き上げる。

中小企業は継続雇用する従業員だけではなく新規雇用者も含めた全体の給与総額を比較して判断。前年度と比べて2.5%以上増やせば控除率が30%となる。教育訓練費を10%以上増やすと10%分を上積みして最大40%とする。

大企業は前年度から継続雇用している社員の給与総額から判断。4%以上増えれば雇用者全体の給与総額を増やした分の25%を法人税額から差し引く。教育訓練費を20%以上増やした場合は5%分を積み増して最大で30%とする。

2.電子帳簿保存法、電子保存の義務化は2年宥恕

2022年1月1日から施行される改正電子帳簿保存法(電帳法)においては、1月1日以後に行う電子データで受け取った請求書や領収書等は電子データでの保存が義務付けられていたが、義務化を2年宥恕することが盛り込まれた。

大綱では「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたもの)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる」と記載されている。

つまり「やむを得ない事情」があれば「令和4年1月1日から令和5年12月31日まで2年間」は、「出力書面」でOKというわけだ。

さらに注書として、「(注2)上記の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等を保存している場合における当該電磁的記録の保存に関する上記の措置の適用については、当該電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出力書面等による保存を可能とするよう、運用上、適切に配慮することとする」と明記され、同措置の適用に際しては、申請が不要ということとなった。

3.税理士制度の見直しで13の改正項目

また大綱では、納税環境整備の一環として「税理士制度の見直し」が明記されている。具体的には、

  • (1)税理士の業務の電子化等の推進
  • (2)税理士事務所の該当性の判定基準の見直し
  • (3)税務代理の範囲の明確化
  • (4)税理士会の総会等の招集通知及び議決権の行使の委任の電子化
  • (5)税理士名簿等の作成方法の明確化
  • (6)税理士試験の受験資格要件の緩和
  • (7)税理士法人制度の見直し
  • (8)懲戒処分を受けるべきであったことについての決定制度の創設等
  • (9)懲戒処分等の除斥期間の創設
  • (10)税理士法に違反する行為又は事実に関する調査の見直し
  • (11)税理士が申告書に添付することができる計算事項、審査事項等を記載した書面に関する様式の整備
  • (12)税理士試験受験願書等に関する様式の整備
  • (13)その他所要の措置を講じる

と、13の改正項目が掲げられている。

4.その他の主な改正項目

このほか、大綱では、「交際費等の損金不算入制度の適用期限の延長」「財産債務調書制度における提出期限の見直し」「法人版事業承継税制(特例措置)及び個人版事業承継税制に係る特例承継計画の申請期限等の延長」等の建議項目が盛り込まれた。

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