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令和2年度「再調査の請求」 コロナの影響で不服申し立ては減少

2021.08.16

はじめに

国税当局の処分に不満がある場合、納税者は税務署に対して「再調査の請求」ができるが、先ごろ、国税庁から令和2年度(会計年度)における「再調査の請求」等の概要が公表された。それによると、令和元年度及び令和2年度は税務調査件数の減少も影響し、再調査の請求件数も減少。新型コロナウイルス感染症の影響が色濃く出ている。

1.「再調査の請求」全ての税目で減少

税務調査後の更正処分に納得できない場合、国税当局に対して処分の取り消しや変更、再調査を求めて不服申し立てをすることができる。具体的には、国税当局に対する「再調査の請求(かつての異議申立て)」、国税不服審判所長に対する「審査請求」、裁判所に対して行う「訴訟」の3つだ。「再調査の請求」は、税務署に対して調査のやり直しを求める措置であり、「審査請求」は行政上の救済制度、「訴訟」は処分の是正を求める司法上の救済制度となる。

      
「再調査の請求」と「審査請求」の違い
申立先 期限申立方法
再審査の請求 税務署長
または国税局長
3カ月以内 「再調査の請求書」を所轄の税務署長または国税局長へ提出
審査請求 国税不服審判所長 再調査請求をした場合
 =1カ月以内
審査請求を直接する場合
 =3カ月以内
「審査請求書」を国税不服審判所の支部または支所に提出

これら納税者の権利救済措置に関して、国税庁はさきごろ、令和2年度における「再調査の請求」の概要を公表した。

「再調査の請求」の発生件数は、申告所得税等で令和元年の547件から同2年度の391件、法人税等で214件から210件、徴収で122件から32件と、消費税や相続・贈与等のすべての税目で減少したことから、全体としても前年度の1,359件から1,000件と▲26.5%となっている。

令和元年度も平成30年度の2,043件から▲66.5%と大幅に減少しており、令和元年度、同2年度と、コロナ禍の影響で税務調査件数が激減したことに伴い、不利益処分件数の減少につながったものと推察される。

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出典:令和2年度における再調査の請求の概要|国税庁ホームページ

2.「納税者の主張」容認割合も僅かに減少

令和2年度の「再調査の請求」の処理件数については、「取下げ等」125件、「却下」95件、「棄却」679件、「一部取消」96件、「全部取消」4件の合計999件(前年度比▲34.0%)。納税者の主張が一部でも認められたのは計100件。処理件数全体に占める認容割合(処分の全部又は一部が取り消された割合)は前年度から▲2.4ポイントの10.0%だった。平成29年度以降、容認割合は12%前後を推移していたことからすると、若干、減少していることが伺える。

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