コロナ禍での納税猶予 32万2,801件に適用 税額は1兆5,176億4,700万円
2021.05.28
はじめに
国税庁はこのほど、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な納税者に対し設けられた「納税の猶予制度の特例(特例猶予)」の適用状況の最終集計(令和2年4月~令和3年2月適用分)を発表した。
それによると、猶予申請を許可した件数は32万2,801件で、税額は1兆5,176億4,700万円にのぼる。
1.「消費税及び地方消費税」の適用で56%占める
特例猶予の適用件数で最も多かったのが、「消費税及び地方消費税」で25万6,048件、全体の56%を占める。次いで、「源泉所得税」8万5,349件で18.7%、「申告所得税」6万884件で13.3%となっている。適用税額でも「消費税及び地方消費税が最も多く、9,059億4,200万円と全体の59.7%を占め、次いで「法人税」が4,361億8,400万円で28.7%となっており、両税目で全体の9割弱を占める結果となっている(図表参考)。
適用件数(件) | 適用税額(百万円) | |||
---|---|---|---|---|
全税目 | 457,363 | 100% | 1,517,647 | 100% |
所得税 | 146,233 | 32% | 121,781 | 8% |
(内)源泉所得税 | 85,349 | 18.70% | 89,562 | 5.90% |
(内)申告所得税 | 60,884 | 13.30% | 32,219 | 2.10% |
法人税 | 28,904 | 6.30% | 436,184 | 28.70% |
消費税及び地方消費税 | 256,048 | 56% | 905,942 | 59.70% |
その他税目 | 26,178 | 5.70% | 53,740 | 3.50% |
(図表:国税庁公表資料から作成) |
この数字はあくまでも特例猶予に係るもので、既存の「申請による猶予制度」の適用件数・税額は含まれていない。国税庁によると、平成30事務年度(平成30年7月1日~令和元年6月末)の既存の「申請による猶予制度」の適用状況は、件数が4万1,871件、税額は694億8,700万円となっている。
2.新型コロナ感染症の影響に係る特例猶予
新型コロナ感染症の影響に係る特例猶予は、令和2年2月1日から令和3年2月1日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税等ほぼ全ての税目(印紙で納めるもの等を除く)が対象。また、これら税目ですでに納期限が過ぎている未納の国税(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡って同特例を利用することができる。適用には、納期限までに申請書の提出が必要となるが、やむを得ない理由があると認められるときは、納期限後でも申請できる。
特例猶予は、納税が無担保で1年間猶予されるうえ、既存の猶予制度と異なり延滞税も不要。対象は、
- (1)新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1ヵ月以上)に事業等に係る収入が前年同期に比べて20%以上減少している。
- (2)一時に納税することが困難であること。
たとえば、少なくとも納税してしまうと、今後6ヵ月間の運転資金並びに納税者及び納税者と生計を一にする配偶者その他の親族の生活の維持のために必要な資金まで使ってしまい事業活動及び生活が困難になってしまうことなどが挙げられる。
いずれも満たす場合に適用される。個人法人の別、規模は問わない。
なお、特例猶予は、申請期限である令和3年2月1日をもって終了している。
3.今使える納税猶予について
令和3年2月2日以降に納税猶予を受けるためには、現状では、以下の制度がある。
- (1)換価の猶予(延滞税軽減※)
- (2)納税の猶予(延滞税免除又は軽減※)
上記(1)「換価の猶予」の適用は、
- ・一時の納税により、事業の継続・生活維持が困難となるおそれがあること。
- ・納税について誠実な意思があること。
- ・納期限から6ヶ月以内に申請があること。
- ・猶予を受けようとする国税以外に滞納がないこと。
(注)
- ・一時の納税により、事業の継続・生活維持が困難となるおそれがあること。
- ・納税について誠実な意思があること。
- ・納期限から6ヶ月以内に申請があること。
- ・猶予を受けようとする国税以外に滞納がないこと。
「換価の猶予」が適用されると、猶予期間中(原則1年間)は延滞税が軽減される。令和3年における延滞税の軽減については、年 8.8%の割合が年 1.0%の割合となる。
(2)納税の猶予(延滞税免除又は軽減※)の適応は、
- ・新型コロナウイルス感染症に関連するなどして、以下のようなケースに該当すること。
- ①新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した。
- ②納税者ご本人又は生計を同じにするご家族が病気にかかった。
- ③納税者の方が営む事業について、やむを得ず休廃業をした。
- ④納税者の方が営む事業について、利益の減少等により、著しい損失を受けた。
- ・①~④があることにより、一時の納税ができないこと。
- ・申請があること。
(注) 担保の提供が明らかに可能である場合を除いて担保は不要。
※ 令和3年における延滞税の軽減については、年 8.8%の割合が年 1.0%の割合となる。
次のような個別事情がある場合は、延滞税なしで「納税の猶予」が認められることがある。
- ・新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合
- ・納税者ご本人又は生計を同じにするご家族が病気にかかった場合。
詳しくは税務署に確認してください。