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コロナ禍の経営悪化 社長の給与を「減額」⇒「戻す」は可能か!?

2021.04.13

はじめに

コロナ禍において売上が減少し、会社の存続や従業員の雇用維持のため、社長の給与を減らして乗り切りたいとするケースがある。
 しかし、社長の給与を一度下げてしまうと、元に戻すことは困難だ。というのも、役員の給与は、平成29年度税制改正で、職務執行前にあらかじめ支給時期・支給額を定めることが損金計上できる要件になっているからだ。

1.役員給与を損金処理するための「特別な理由」とは

以下の3つの役員給与以外は原則、損金処理できない。

  • ①定期同額給与・・・・・役員に対して、毎月同じ金額を支払う給与
  • ②事前確定届出給与・・・事前に所定の届出書を、定められた期限までに税務署に届出し、その届出通りの日時・金額で支給する給与
  • ③業績連動給与・・・・・有価証券報告書に記載されている「利益に関する指標」に基づいて支払われる給与
 なかでも、多くの中小企業経営者が採用しているのが「定期同額給与」。定期同額給与は、事業年度開始の日から3カ月以内に役員報酬の金額を決定する必要がある。そして「株主総会議事録」や「取締役会議事録」を作成・保管し、当事業年度中は毎月同額の給与を支給し続けなければならない。基本的に同一事業年度中の増額はできず、減額する場合は、特別な事由が必要になる。
 この特別な事由は、
  • ①臨時改定事由(役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更等の場合(減額、増額))
  • ②業績悪化改定事由(経営の状況が著しく悪化したこと等の場合(減額))
の2つだけ。

2.コロナ禍で経営悪化は「特別な事由」に該当

コロナ禍での経営悪化について国税庁は、「新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」で、「『特別な事由』に該当する」と明記。具体的には、「業績が悪化した場合に行う役員給与の減額〔令和2年4月13日追加〕」及び「業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額〔令和2年4月13日追加〕」の2事例で回答。業績が悪化した場合だけでなく、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響による経済環境により、業績悪化が認められる場合も業務悪化改定事由による改定に該当すると示した。

3.社長の給与を「減額」⇒「戻す」は可能か

 ところが、ここで問題になってきたのが、社長の給与を一時的に引下げ、売上が回復してきたら元の金額に戻したらダメなのかという疑問だ。
 この点、国税庁の「新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」には何も明記されていない。
 そこで、法人税の審理担当だった複数の国税OB税理士の意見を聞いてみると、概ね、「『減額』⇒『元に戻す』という行為は、『増額』とも捉えることができ、利益調整したのではないかと判断される可能性が高い。臨時改定事由の『役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更等』にも関係しないので、結局のところ『戻す』という行為は、『特別な事由』には該当せず、定期同額給与が使えなくなると判断される」としている。
それでは、コロナ禍での経営悪化措置として、社長の給与を一時的に「減額」⇒「戻す」ということは全くできないのであろうか。この点、前出のOB税理士は、最善策ではないと前置きしながらも「社長の給与は減額せず、しばらくの間は未払にしておき、経営が回復したら通常通り支給していくのが現実的ではないか。ただこの場合、源泉所得税は納税しなくてはいけないので、社長にはその当たりを理解してもらう必要がある」としている。
結局のところ、社長の給与を減額してしまったら、税務上安全なのは、同一事業年度中には「上げる」行為はせず、経営が回復してきた次事業年度の役員給与で取り戻すことが良いようだ。

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