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国税庁 「在宅勤務手当」「通信料」等を支給した場合の課税判断示す

2021.02.16

国税庁は2021年1月15日、企業の在宅勤務者(テレワーク)の増加に伴い、在宅勤務手当などの税務上の取扱として「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公表した。
役員や使用人に支給する手当は原則、給与所得となるが一部例外規定が設けられている。例えば、通勤手当のうち、1カ月15万円以下、宿直や日直手当のうち、一定額以下のもの、出張旅費、出張にかかる日当などが上げられるが、新たな働き方である「在宅勤務」に関しては、こうした税務上の取扱いが示されていなかったことから、国税庁が質疑応答形式でこのほどまとめた。

1.一定額の「在宅勤務手当」を支給した場合は給与

コロナ禍の緊急事態宣言では、企業に7割の在宅勤務を要請するなど、一気にテレワークが進んだが、自宅で仕事をするための諸経費がかかることから、多くの企業が「在宅勤務手当」等を支給するケースが増えた。従業員に在宅勤務手当を支給した場合、FAQでは在宅勤務に通常必要な費用の"実費相当額"を支給するなら従業員に対する給与課税はしなくてよいとしている。つまり"実費精算"なら給与課税しないというもので、例えば、従業員全員に一律毎月5千円を支給し、従業員が在宅勤務に必要な費用として使用しなかったとしても企業に返還しなくてよいならば、"実費精算"に当たらないため、従業員の給与として課税対象となる。

2.パソコンなど支給した場合は注意

在宅勤務においては、企業が従業員にパソコン等を支給することがほとんどだが、支給の仕方によっては給与課税されるので注意が必要だ。例えば、パソコンを「貸与」するのであれば給与課税する必要はない。他の事務用品においても返還義務のある「貸与」なら給与課税する必要ないが、事務用品等の所有権が従業員に移転する場合は、従業員に対して"現物の給与"を支給したとして所得税の課税対象となる。

3."実費精算"の計算方法は厄介

国税庁はFAQにおいて、給与課税しなくてよい"実費精算"の計算方法について定めた。それによると、

  • ①企業が従業員に対して金銭を仮払いした後、従業員が事務用品等を購入し、その領収証などを企業に提出してその購入費用を精算する方法
  • ②従業員が立替払いにより事務用品等を購入した後、領収証などを企業に提出してその購入費用を精算する方法

いずれも「領収証」等の購入証明となる資料を提出してもらい、そのかかった実費分を企業が負担するならば給与課税しなくてよいとしている。
厄介なのがWiFiや電話などの「通信費」「電気料金」だ。通常、家庭で使っている一部を仕事で使うだけなので、私的利用部分と業務利用部分に分けて考えなくてはいけない。国税庁では"実費費用"については経費として給与課税しないとしているため、業務のために使用した部分を合理的に計算し、その計算された金額に基づいて精算する必要があるとしている。

・通信費の計算方法

FAQによると、電話料金のうち「通話料」についての計算方法は、通話明細書等で業務のための通話料金が確認できれば、その金額を企業が負担する分には、従業員に対する給与課税されることはないとしている。
一方で電話料金の「基本使用料」や「インターネット接続に係る通信料」については、次の算式で算出したものを企業が負担する場合は給与課税しなくてOKとしている。なお、業務のための通話を頻繁に行うような場合には、通話料についても、次の算式により業務利用分を計算してもよいとされている。

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つまり、月額料金を日割り計算し、在宅勤務の日数分の「半額」を業務のために利用した実費とみなすわけだ。

例えば、従業員が2月に在宅勤務を20日間行い、通信料等の月額料金1万円であった場合、

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と、3571円が実費負担分として企業が支給しても給与課税されない。

・電気料金の場合は床面積も考慮

電気料金の場合には、在宅勤務の日数に加えて業務に使用した部屋の床面積も考慮して業務利用部分を計算するとしている。

なお、FAQで示された計算方法は、いずれも概算であるため、企業で精緻な方法で業務利用部分を算出するのであれば、その方法で算出された金額を企業が支給したとしても給与課税しなくてよいとしている。

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4.レンタルオフィスも実費精算なら給与課税しなくてよい

このほか、テレワークの推進で需要が伸びているレンタルオフィスだが、社員がレンタルオフィスを利用して仕事をした場合、その費用を会社が負担したのならば従業員に対する給与とはならない。こちらもあくまで実費負担分となり、従業員が立替払いしていても、企業が一定額を支給し、後からその代金を精算する方法何れかであっても、領収証などの証拠書類を残す必要がある。

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