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2021年 与党税制改正大綱 ~税理士が押さえておきたい6つのポイント~

2020.12.15

自民、公明両党は12月10日、2021年度与党税制改正大綱を正式決定した。これを受けて政府は12月中に閣議決定し、21年1月召集の通常国会に関連法案を提出する。
大綱では、菅義偉首相が掲げる2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする目標に向けて企業の投資を促進する税制や新型コロナウイルスの感染拡大で浮き彫りになったデジタル化の遅れに対応するための税制などが盛り込まれた。
本コーナーでは、会計事務所や中小企業経営者が抑えておきたいポイントを紹介する。

1.カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の新設

脱炭素化に向けた設備投資を行った企業の法人税を、投資額の最大10%控除する。一定条件(中長期環境適応生産性向上設備(仮称)または中長期環境適応需要開拓製品生産設備(仮称)の取得等)を満たし、国内事業の用に供した場合は、取得金額の50%の特別償却とその取得価額の5%(温暖化ガスの削減に著しく資するものは10%)の税額控除との選択適用ができる。控除税額はデジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制との合計で当期法人税額の20%を上限とする。期限措置で施行日から2024年3月31日まで。

2.デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の新設

新設するDX投資促進税制は、生産やサービスへのデジタル技術の活用を支援するため、企業が自動化施設やクラウドソフトウェアの導入といった設備投資をおこなう場合に、投資額の3%(グループ外とデータ連携をする場合は5%)の税額控除もしくは、取得価額の30%の特別償却との選択適用ができることとする。

3.研究開発税制の見直し

新型コロナの影響で売り上げが減少した企業にも、今後に向けた研究開発を促すため、研究開発に掛かった費用の一部を法人税から差し引ける研究開発税制を拡大する。現在は大学やベンチャー企業と共同で行うことなどを条件に、法人税から最大45%差し引ける措置があるが、2021年度から2年間に限って上限を50%に引き上げる。対象は、感染拡大前と比べて年間の売り上げが2%以上減少した企業。なお、試験研究費のうち、研究開発費として損金経理をした金額で非試験研究用資産の取得価額に含まれるものを加える。試験研究費総額に係る税額控除制度について税額控除率を見直す。

4.短期退職者の退職所得課税の見直し

働き方の多様化を踏まえ、勤続年数が5年以下である者に支払う退職金は、短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分については、2分の1課税を適用しないことで退職所得課税の適正化を図る。特定役員退職金等は該当しない。令和4年分の所得税について適用。

5.中小企業のM&A(買収・合併)時の法人税軽減制度

本制度の創設目的は、中小企業の統合・再編による生産性向上を図るための特例。青色申告法人である中小企業が取得金額10億円以下など一定の要件を満たすM&Aをした場合、準備金を積み立てることで取得価額の70%の損金算入が認めるもの。準備金は取得した株式を売却や清算等で保有しなくなった場合に取崩して益金算入する。また、株式を取得した事業年度から5年経過した事業年度から5分の1ずつ取崩して益金算入する。あくまで課税の繰延べ措置なので、「事業譲受はのれん代の損金算入。株式取得は損金算入不可」という原則が崩れるわけではない。

6.教育資金などの一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長

直系尊属から教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、適用期限を2年延長する。子育ての負担を軽減するため、祖父母などからの教育資金の援助に贈与税がかからないようにする特例措置は、節税目的での利用を防ぐため、適用条件を厳しくしたうえで期限を2年延長する。今回の改正で、贈与を受けた孫などが23歳未満や在学中である場合などを除いて、相続税の課税対象とし、通常の税額に2割加算する。
このほか、結婚や出産、育児にかかる資金を祖父母などから援助してもらう「結婚資金贈与」については、1千万円を上限として贈与税を非課税とする特例措置も、同様に条件を厳しくしたうえで期限を2年延長となった。

このほか、住宅ローン減税の延長やセルフメディケーション税制の延長をはじめ、税理士制度を見直すことについては、税理士の業務環境や納税環境の電子化を踏まえ、法改正を視野に入れた検討事項に盛り込まれた。

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