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第29回 シナノ紙工株式会社(神奈川県横浜市)

“損得勘定なし”の経営戦略で レッドオーシャン化した市場を生き残る

 シナノ紙工株式会社は1959年、段ボールおよび紙器製造販売業として起業し、今年で創業60周年を迎えました。同業他社が次々に大手に統合される中、時流を読んだ積極的な設備投資と、妥協のない人材育成によって、堅実な経営を継続しています。
 中小企業が生き残る秘訣と、今後の展望について、代表取締役の粳間政幸(うるままさゆき)社長と顧問税理士の松実宏幸先生にお話を伺いました。



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■左から粳間政幸社長、松実宏幸先生



社員の失敗から生まれたヒット商品


―御社の事業内容についてお聞かせ下さい。


社長
:大手飲料メーカーや食品メーカー用の段ボールの製造を中心に、宣伝用POPなどの企画・開発などを幅広く展開しています。特に弊社自慢の製品は美粧段ボールです。美粧段ボールとは高級な果物や、お土産やお歳暮の商品を入れる、綺麗にカラー印刷された段ボール箱です。通常の段ボールは、波形に成形された紙(中芯)を表紙の紙(ライナー)でサンドイッチのように挟んで接着し、強度をもたせた構造になっていますが、美粧段ボールは、別工程でオフセット印刷したカラー板紙を片面段ボールに貼り合わせることで、同時に美しさも実現するという、段ボールと化粧箱の良いとこ取りをした製品なのです。

 また、応用形として、印刷を施す板紙を厚紙でなく薄手の紙にして、段ボール独特の素朴な風合いを生かした「美段紙(イケメン段ボール)」、表面に穴を開けて段ボールの構造である波形をチラ見せして個性的な可愛さを狙った「チラ段」など、通常のものに比べて付加価値が上がるような商品を独自開発しています。


―アイデア力が素晴らしいです。大胆な設備投資、斬新な商品開発に余念がないと評判の御社ですが独自商品の誕生までにはどのようなエピソードがありましたか?

社長:じつは「チラ段」は、失敗から生まれた副産物です。製品の表面が偶然破れたのを見た社員の思いつきがきっかけで商品化されました。さらに「チラ段」を応用した「宝箱」は、子どものいる社員から要望を受けて試作し、何度も改良を重ね開発しました。

カラー宝箱.jpg

■試作品として作成した「宝箱」



損得勘定で判断するな


―現在に至るまでの苦労話はありますか。


社長
:先代は「紙業界は不況を知らない」と言っていましたが、実際にはそんなことはありませんでした(笑)。不況の中でも会社を存続させていくためには、顧客からの「信用」が何よりも大切です。そのための方法はシンプルです。嘘をつかないこと、人を困らせず、人として正しい行いをし、損得勘定で判断しないことです。損得勘定で判断すれば、後で必ず手痛いしっぺ返しに遭うからです。
 あるとき、社員が小さな傷がついた段ボールを持ってきて「納期が迫っているからこのまま納品してよいか」と私に聞いてきたことがありました。私は「ダメ。起きたことをお客様に正直に伝え、現状でできる最善案を提案しなさい」と指示しました。時には品質に厳しい取引先から叱咤を受け、それに応えていくうちに製品に磨きがかかっていったように思えます。

 従来、この業界では青果物、飲料、小型家電のパッケージが注文の中心でしたが、現在は弱電に代わり通信販売のパッケージ需要が増加しています。時代の変化とともに客層や要求が変化していくため、世の中の動きには常にアンテナを張っておく必要があります。最近の傾向としては、品質重視の農家さんからの美粧段ボール需要が増加しています。デザイン面などの細やかなニーズに個別対応するなど試行錯誤して顧客満足を追究しています。

 自分達ができる最大限を尽くして、顧客に満足してもらう。当社は、その瞬間に得られる感動を、社員全員で共有できる集団でありたい、と考えているのです。



パッケージで「夢」を与えたい

―今後の事業展望についてお教えください。


社長
:顧客に「夢」を与えることができるパッケージを製作することが目標です。
 そのためには、製品の質だけでなく、社員の姿勢、社内環境全てが高い水準にあることが不可欠です。まずは挨拶や社内清掃という"基礎"を徹底し、習慣化してもらえるよう努力するほか、社員が改善したほうが良いと思ったことがあれば知らせてもらう「提案制度」を立ち上げました。働き方改革を見据えて有給休暇を取りやすくするために、各製造ラインに後継者を育てていきたいのですが、なかなか思うようにいかないですね。



役職に関係なく、腹を割って話す


―最後に先生から、シナノ紙工様のご指導に対する思いについてお聞かせください。


先生
:私は学生時代からシナノ紙工様を知っており、「いつか税理士になったら、こんな会社の顧問になりたい」と考えていました。税理士になって数年後、私の前任者がシナノ紙工様を紹介してくれたときは、遠い日の夢が叶い、大変嬉しかったことを覚えています。
 現社長は、人を創っていくという姿勢を、当時からお持ちでした。社員一人ひとりに対して、立場に関係なく腹を割って話す姿勢、そして大胆とも言える設備投資等の経営感覚も素晴らしいと思います。損得勘定を入れず、常に真摯で謙虚なその姿勢は、社員たちから慕われていると日頃から感じます。


社長
:先生は私と真逆のタイプで、神経質と言っていいぐらい、物事に対して細かく、数字の見方などをすごくわかりやすく指導してくださるので、経営する上でとても助かっています。ウマが合うのでしょうね。これから、先を見据えて会社を続けていくには、なくてはならない存在です。これからもどうぞよろしくお願いします。

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■シナノ紙工株式会社 本社


―粳間社長、松実先生、本日は貴重なお話をありがとうございました。今後益々の発展を祈念しております。

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シナノ紙工株式会社

代表取締役社長 粳間 政幸(うるま まさゆき)

創業 19595

本社 神奈川県横浜市保土ヶ谷区上菅田町1310

TEL  045-381-1183

URL  https://www.shinanopkg.co.jp

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松実宏幸 税理士事務所

税理士 松実 宏幸

 (エッサムファミリー会神奈川会会計監査)

住所 神奈川県横浜市保土ヶ谷区保土ヶ谷町

       1-1-4 サーベイ横浜203

TEL  045-743-1771

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