第28回 富士テクノ工業株式会社(大阪府枚方市)
積極的に海外進出 世界トップシェアを誇る超精密定量ポンプ
富士テクノ工業株式会社は、1955年に大阪市西区で、ポンプの代理店「富士商店」として創業、自社で製造を開始した、精密定量ポンプメーカーです。
1983年に業界初の無脈動の超精密定量ポンプ「スーパーメータリングポンプ」を開発。以降、改良を重ねて、業界で世界的なシェアを達成するまでに成長しました。
そこで今回は、海外進出への挑戦や人材育成について、代表取締役の生信剛(いきのぶたけし)社長と、顧問税理士の加藤正親先生にお話を伺いました。
■生信剛社長 (右)と加藤正親税理士(左)
あらゆる産業界で高いシェアを占める超精密定量ポンプ
―御社の主力製品である精密定量ポンプとは、どのような製品なのですか。
社長:精密定量ポンプは、液体を正確に決まった量ずつ送り出すことができる装置です。
化学、機械、自動車、食品、製薬など、さまざまな分野で使われており、なかでも当社のポンプは精度が高いことで評価をいただいています。特に、リチウムイオン電池の製造やJAXA(宇宙航空研究開発機構)の航空機エンジンの開発の為の燃焼実験はほとんど総て、弊社のポンプで行われています。
また、精密機械部品以外では大手自動車メーカーでのエンジンテストで使用されていたり、製薬会社で当社のポンプを実装したプラントの製作に踏み出すなど、さらに活躍の幅が広がっています。
―あらゆる産業界から、国際的な評価をされるまでに至る経緯についてお教えください。
社長:以前この業界では、「定量ポンプ」と名のつく製品はあっても、実際には移送の際にポンプに脈動が生じ、定量の液体を移送することが難しいという問題がありました。まさに定量で移送できるポンプの開発が我々の業界での共通の使命でした。そこでポンプが脈動しないために、当社の技術の粋を詰め込んで、開発したのが「スーパーメータリングポンプ」です。
当社のスーパーメータリングポンプは、その意味で、業界の通説を覆したといっても過言ではない画期的な開発となり、これを機に国内外から高い評価を得ることができました。脈動させずに液体を移送することができるため、塗布面に泡が混入せず、常に均一な厚みでコーティングすることが可能になりました。当社のポンプは精度において世界一を自負しております。
海外進出への挑戦
―海外展開を積極的に行うきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
社長:もともと海外志向があり、前職では海外事業部に所属していました。当社の社長に就任した時から「中小企業ではあるけれど、海外展開していきたい」とチャンスをうかがっていたのです。
通信費や渡航費が安くなり、海外展開が容易になったことをきっかけに、世界各地から広く情報を収集し、価格競争力のある部品や材料、商品の輸入を始めました。現在はアメリカ、オランダ、イスラエル、中国など10ヶ国に展開しています。
―広く展開をされているのですね。海外でのお客様フォローはどう行っているのですか。
社長:研修を経た現地スタッフにアフターメンテナンスを任せ、より質の高いサービスを提供しています。中国に設立した現地法人では、日本から派遣した技術スタッフを常駐させ、日本と同じレベルの加工精度での生産体制を実現しています。
欠かせない戦力である外国人スタッフ
―専門的な知識を必要とする事業だと思いますが、人材育成について配慮されていることなどはございますか?
社長:当社では、企画立案から設計、製造、検品まですべてを自社でまかなっています。それを、50人程度の少数精鋭方式でやっていくには、社員一人ひとりのレベルがかなり高くなくてはいけません。ですが、思うような人材が集まってくれるわけではありませんので、悩ましいところです。
そこで、海外の優秀な人材にも目を向けて、外国人、特に中国人も多数採用しています。世間では中国人に対して良くないイメージを持つ人もいるようですが、彼らの働きぶりは真面目で、当社にとって大きな戦力になってくれています。
彼らは、家族や親戚など、自分の属するコミュニティ内のルールや習慣を大切にしています。一度親しくなって、信頼関係ができた相手に対してはとても律儀で、絶対に裏切りません。近年の日本は、隣近所とのコミュニケーションが希薄になってきていますよね。彼らは逆で、人間関係が濃いんですよ。当社に勤めていた社員が、今でも毎年お中元を欠かさず贈ってくれるなんてこともあります。ただ、当社の考え方や価値観を、彼ら外国人従業員に分かってもらうことには苦労しました。今でもその溝を埋めきれないところはあり、今後の課題となっています。
社員が主役の永く続いていく企業に
―今後の事業の展望についてお聞かせください。
社長:私がいなくても、社員だけで成長し続ける企業にすることが目標です。
力のある優秀な人材が会社を引っ張り、それ以外の社員も、まじめに働いていれば充分に生活できて、会社が継続的に発展していく。そうした会社づくりを、今後5年から10年かけてやっていきたいと考えています。
30年ほど前、会社の経営が危機に陥り、やむを得ず社員をリストラしたことがありました。あの時は経営者として屈辱的でしたね。その経験を忘れていないからこそ、今の経営方針があります。次代の社長には、巨額の投資をして無理に売り上げを増やそうとするよりも、地に足をつけて着実に経営していく姿勢を忘れないでいただきたいと思います。
攻守万能の中小企業
―加藤先生、富士テクノ工業様をご指導されている中で、心がけていらっしゃることはございますか。
先生:富士テクノ工業さんは、経営方針は堅実ですが、ただ守りの経営をするだけではなく、海外にも積極的に進出するなど、攻めるところはしっかり攻めています。中小企業でここまで海外進出をするのは珍しい事例です。今後、事業継承がうまくいくよう、しっかりバックアップしていく所存です。
―生信社長、加藤先生、本日は貴重なお話しをありがとうございました。今後益々の発展を祈念しております。
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富士テクノ工業株式会社
代表取締役社長 生信 剛(いきのぶたけし)
創業 1955年1月
本社 大阪府枚方市春日西町2-29-5
TEL 072-858-5251
URL https://www.fuji-techno.co.jp/
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加藤会計事務所
税理士 加藤 正親
(関西エッサムファミリー会 会長)
所在地 大阪府大阪市中央区谷町5-4-1
ロイヤル谷町タワー406
TEL 06-4304-1557
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