第26回 株式会社共進牧場(兵庫県神戸市)
地元ブランドを活かした 県オンリーワンのローカルメーカー
株式会社共進牧場は、兵庫県神戸市に本社を置く、県内最大手の乳業メーカーです。
共進牛乳のブランド名で近畿2府4県において広く知られる同社は、地域密着を経営方針に掲げ、堅実な経営を続けてきました。
明治創業という伝統の歴史を振り返ると同時に、特色ある経営戦略を専務取締役の尾松恵様にお伺いしました。
日本における牛乳の歴史
―御社は明治23年に創業され大変長い歴史がありますが、そのルーツをお聞かせください。
尾松:乳業メーカーは、神戸や横浜から創業したところが多いですね。その理由として、明治維新以降、港の開港により西洋人が住むようになったことが挙げられます。彼らにとって、牛乳やバター、生クリームなどは食生活の必需品でした。もともと日本人には牛乳を飲む、乳製品を食すという食習慣はありませんでしたが、開港の影響で何かと乳製品を手に入れる機会があったことや、西洋人からの需要があったことで、神戸や横浜で酪農が始まり、その後日本中に広まりました。
当社の歴史は、明治23年(1890年)外国貿易で賑わう神戸の街角で始めた牛乳販売店がその起源となります。まもなく創業130年を迎え、現在の代表取締役である中尾嘉延は5代目になります。
幾多の危機を乗り越えて
―130年もの歴史のなかで、数多くのご苦労をなさったのでしょうね。
尾松:昭和20~30年代の神戸の街中には乳業メーカーが20社程あり、その多くが小さい規模のものでした。時代の変遷にともない衛生基準が厳しくなるなか、多くのメーカーは衛生面の対応についていけなかったり、学校給食での牛乳需要の増加に従い工場の規模も大きくしたいと思っているけれど、市内に新たな土地を確保できなかった、などの理由により廃業に追いやられる同業者がたくさんありました。
当社も、廃業した他社と同じ道を辿るかと思われましたが、先見の明があった先代は、昭和22年頃には、創業者とかかわりの深い小野市青野原に牧場および飼料畑を開きました。さらに昭和34年、小野市浄谷町に約5万坪の土地を新たに購入し、そこに酪農と牛乳の生産設備を移すことで、本社機能と生産部門の役割分担という現在とほぼ同じ体制が確立し、危機を乗り越えたのです。
大震災を機にエネルギー問題を考える
―御社の敷地内には太陽光発電施設も備えておられるそうですね。
尾松:はい。阪神大震災、東日本大震災を経て、電力エネルギーのありがたさを痛感しました。牛乳や乳製品の生産は、一般の皆様が思っている以上に、電力を消費する事業だからです。節電などで生産が止まると、せっかく採乳した牛乳も破棄せざるを得ません。さらに、地震などで電力の需要が追いつかないときに、地域家庭の電力を我々だけが使用するわけにもいきません。
何かできることはないかと考えたときに、当社には7千坪の遊休地があったので、この土地を利用し、太陽光発電を建設する取り組みをはじめました。たとえ「ものづくり」という大義名分があったとしても、地球資源を使う一方ではよくありません。
平成26年6月、1メガワットクラスの太陽光発電所が完成しました。発電量は、当社の工場で必要な電力の四分の一に相当します。電力を使う一方ではなくて、多少なりともお返しできればと考えております。
自社牧場でジャージー牛を育てる
―すばらしいお考えですね。太陽光発電の他に、御社独自の特徴はございますか。
尾松:当社は創業以来「より自然で、より新鮮な風味豊かな牛乳を食卓にお届けし、食文化の充実を目指す」 ことを企業理念として掲げています。ナチュラル&ヘルシーを基本とし、安心安全でご利用いただける製品を消費者に届けるべく、社員全員が力を合わせ、特色ある経営を続けてきました。
その特徴として、自社牧場の存在と、珍しい品種の牛を育てています。一般の消費者にはわかりにくいかもしれませんが「牛を飼う」ことと「牛乳を販売する」という行為は、異質なものなのです。これらの行為を両立するためには、酪農・乳搾りをする生産者(生)、牛乳の製品づくり(処)、販売(販)、これら3つ「生・処・販」の回転サイクルを効率的に回さなければならないのです。
例えば、牛乳は生ものですから長期保存はできません。また、牛の頭数は同じですから、需要が増減したからといってすぐに生産量を調整することもできません。大手メーカーでも、酪農まで手がけているところは少ないので、「生・処・販」を一貫しておこなえることは強みになります。
日本にいる大抵の牛はホルスタイン種ですが、当社ではジャージー種という牛を飼育しています。ジャージー種は、ホルスタイン種に比べて身体が小さく、採乳量も2割程少なくなりますが、最大の特長は「乳脂肪値」が高いということです。乳脂肪値というのは、牛乳のパックに大きく「3・6」などと書いてあるものですね。ホルスタイン種では乳脂肪値の平均は3.9%ですが、ジャージー種は5%前後にもなるのです。この値が高ければ、飲料としてだけでなく、クッキーなどのお菓子の原料として使用してもたいへん美味しく仕上がるのです。
■共進牧場様で育てるジャージー牛
"地域で存在感のある会社"を目指して
―今後の事業展望についてお聞かせください。
尾松:地域で存在感のある会社になり続けたいと考えているので、拡大志向よりも、創業の地に根を下ろしたローカルメーカーとしてやっていきたいですね。
しかし、これからの時代ますます人口減少社会となっていくことが統計上も確実視されています。食品の消費量は人口に比例するので、主力の牛乳も人口減少と共に右肩下がりにならざるを得ません。そのなかで、我々ができる戦略として、主力の牛乳以外の商品で、これまで以上に間口を広げる必要があります。例えば、ヨーグルトやアイスクリーム、果汁飲料といった商品の販売や、当社の食材を使ったレストラン経営に乗り出すなど、地道な努力を続けています。
他にも、兵庫県の牛乳消費量は、県別では10位前後にランクインしているという強みもあります。幸い、神戸牛に代表されるように神戸ブランドは、全国的に人気がありますし、また六甲という土地柄も、消費者はよいイメージを抱くようです。このような強みを活かし、これからも"地域で存在感のある会社"になり続けることを目指しています。
■優秀な産出品に送られる「五つ星ひょうご認定証」
─本日は貴重なお話をありがとうございました。株式会社共進牧場様の今後ますますのご発展を祈念しております。
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株式会社共進牧場
代表取締役社長 中尾 嘉延
創業 1890年
本社 神戸市中央区橘通1丁目2-12
TEL:078-341-5115
URL http://www.kyoshin-milk.jp/
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西原正博税理士事務所
税理士 西原 正博
(兵庫エッサムファミリー会 組織部 部長)
所在地 兵庫県神戸市中央区中山手通2-3-15石田ビル3F
TEL 078-331-2546
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