第24回 株式会社 三生(佐賀県鳥栖市)
人間と動物の共存を目指す! 捕獲技術も教える猟具専門店
株式会社三生は、1964 年に工作機器ならびに産業機械の修理・販売業社として創業しました。1983 年に足くくり罠など、野生動物捕獲器の開発・製造・販売に着手したことをきっかけに、野生動物を捕獲する猟具の専門店として成長した老舗企業です。変遷する近年の狩猟体系とともに、経営を続けてきた同社の軌跡と今後の展望について伺いました。
▲左から和田三生社長と、顧問税理士の五嶋純一先生
■株式会社三生について
─ 御社の事業内容についてお聞かせください。
社長:足くくり罠や小動物捕獲用の箱罠、解体用品、噛み止めなど、猟具全般の製造・販売、猪肉販売を行っています。社員は全員が経験豊富な狩猟者であり、全て社員の経験をもとに企画・開発を進め、商品化したものです。小型かつ軽量で扱いやすく、一部の消耗部品を取り替えるだけで繰り返しご使用いただけるエコ商品として、多くの方々にご愛用いただいています。
■商品販売だけでなく、技術指導も行う
─御社では猟具の製造・販売のみならず、捕獲方法のご指導も行っておられるそうですね。
社長:近年は狩猟者の減少により、自然の特性、動物の行動志向、捕獲に関する知識や技術が失われる一方です。そのため猟具を購入するだけでは、なかなか捕獲を成功させられませんでした。そこで猟具の販売と併せて、捕獲技術や駆除方法の指導・提案を行ったところ、「捕獲率が上がった」と、お客様に喜んでいただけました。以来、技術指導にも力を入れて、顧客満足度の向上を目指しています。
■狩猟従事者の減少と教育システムの消失
―いま全国各地で、野生動物による獣害のニュースを耳にします。なぜ、被害が拡大しているのでしょうか。
社長:今から2、30年前は、グループ猟が主体でした。この「グループ猟」ではリーダー(師匠)が存在し、各猟師の役割分担が決まっていて、新人猟師には技術が伝授されていました。これが猟師の「育成プログラム」となっていたのです。当時、狩猟をする目的は、主に娯楽でした。いかに大物を他人より多く捕獲するか、去年よりも多く捕獲するかが重要でした。また、狩猟を長年継続するために小物(幼獣)の捕獲は避け、成獣を対象として達成感を味わっていました。捕獲した動物は自ら捌いて家族と食し、猟を楽しんでいたのです。結果として、猟師は野生動物の生息数を減らすことなく、環境保全に貢献してきました。しかし、猟師の平均年齢の上昇、若年層の趣味嗜好の変化によって狩猟者の数は激減し、同時に育成システムも失われてしまいました。
■獣害の増加と新たなニーズ
―現在はどのような狩猟方法が主体なのですか。
社長:グループ猟が困難になったため、罠を設置して捕獲する罠猟が主体となりました。この罠猟を最も必要としているのは獣害に悩む農家の方々です。2010年の獣害額は239億円となり、過去最悪を記録しました。全国の推定生息数は、2011年でイノシシが約88万頭、シカが約325万頭であり、20年前と比べてそれぞれ約3倍、7倍に増加しました。いわば、有害鳥獣の捕獲・駆除のバランスが崩壊しているといえる状況です。
―主なニーズが農家なのは、そのためですね。
社長:もともと罠は、猟師が自分の捕獲技術をもとに自作するのが主流でした。正しい知識を有していなければ、使いこなすことはできません。このような背景から、当社は捕獲機の性能を向上させるとともに、さきほど申し上げた技術指導を通じて顧客を増やすことで、猟具専門店として自立できるまでに成長したのです。
▲改良を重ねた捕獲機
■次世代の人材育成によって、野生動物との共存を
―技術指導の活動については私財をなげうって社会貢献されているとお聞きしました。
その内容をお聞かせください。
社長:はい。技術指導を行なっていくことで、新人狩猟者の実態が見えてきました。まず、知識と技術を学ぶ場所や仲間を探すことができず、仕方なくインターネットで学ぶ方が多いということ。そして娯楽ではなく、農作物の被害減少のための駆除に目的が変化していることです。狩猟者の育成に必要な環境と教材が不足していることがわかり、また、雨天になると現地指導が難しくなってしまうという問題を解決すべく、2010年に講義室、捕獲用品を扱う実施室、宿泊室を備えた新たな研修施設として「三生塾」を開校するに至りました。
―具体的にどのような方が入塾されるのですか。
社長:狩猟や有害鳥獣駆除のほかに、環境省の認定事業捕獲技術の習得、行政や大学からインターシップとして受け入れるケースもあります。累計受講生数は、すでに8,000人を超えました。研究機関に就職し、業務に従事している方もいます。
次世代の狩猟従事者、行政関係者の育成に精力的に取り組むことで、野生動物と人間の共存に寄与できればと考えています。そのためにも、官民一体となった連携が不可欠なのです。
■ICT(情報通信技術)との融合
―最近では、ICTを活用した製品など、新商品の開発にも余念がないそうですね。
社長:捕獲率の向上を図るため、サル、クマ、イノシシなどの接近情報を携帯電話に瞬時に転送するシステムの商品化に成功しました。
現在は、狩猟者と捕獲個体双方の苦痛を低減するため、電気ショックなどを用いた「安全かつ効率的な止め刺し方法」の開発・実証に取り組んでいます。これは、初心者が野生動物を捕獲した場合、とどめを刺す際の技術的、精神的な負担が捕獲作業のボトルネックになることを防ぐためです。
―今後の課題はございますか。
社長:近年は加害獣が賢くなり、防止柵を簡単に壊して侵入したり、捕獲機を見破って捕獲不可能になるケースが増えています。このような「スレ個体」対策はとくに急ぐ必要があります。有害鳥獣対策が後手に回らないよう、今後も現場ニーズの把握に努め、未来を見据えた商品開発に取り組んで参ります。
─本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。株式会社 三生様の益々のご発展を祈念しております。
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株式会社 三生
代表者 和田 三生
創業 1964 年1 月
所在地 佐賀県鳥栖市轟木町9 4 2
TEL 0942-83-3762
ホームページ http://www.sanseikouki.co.jp
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五嶋純一 税理士事務所
税理士 五嶋 純一
(南九州エッサムファミリー会 会長)
所在地 熊本県熊本市中央区水前寺6-3-12
TEL 096-382-5525
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