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第22回 株式会社吉本(京都府京都市)

着物業界の再生を目指す“直しのプロフェッショナル”の誇り

 日本の代表的な文化のひとつ「着物」。かつては2兆円規模を誇った呉服市場も、日本人の着物離れとともに、現在は約8分の1程度まで縮小したと言われています。業界として苦境に立たされるなか、昭和11年に呉服専門の染み抜き屋として創業した株式会社吉本は、メイン顧客を卸売業者から個人消費者へとシフトし、サービス内容も着物に限定せず大幅に拡大することで成長を続けています。
 今回は企業改革成功までの軌跡やその秘訣、今後の挑戦について、社長の新井修様と顧問税理士の渡邉重樹先生にお話を伺いました。


 

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▲渡邉重樹先生(左)と新井修社長(右)
 

 

■従来の価値観とは真逆の決断

―もともとは、呉服専門の染み抜きをされておられたそうですね。

社長:一般にはほとんど知られていませんが、着物の製造工程には、染め上がり後に染料の飛びや地色のムラなどのお直しがあります。昭和のはじめごろは「消費者が汚したものを直す直し屋は二流」という考えがあったため、当社も卸売業者を中心に10社ほどと契約し、事業を行っていました。しかし、着物の市場は1980年ごろにピークに、日本人のライフスタイルの変化に伴い、急激に縮小していきました。得意先の業者が次々と倒産していく様を目の当たりにした私は「このままでは共倒れになる」という強い危機感を抱き、社長就任後、二流と言われていた「消費者が汚したものをお直しする」事業へ転換をはかったのです。


―新品の着物が売れなくても、着物を持っている日本人は多かったということですね。

社長:そうですね。以前は新品の取り扱いが8割、古いものが2割でしたが、今は完全に逆転しています。それまでの価値観を覆す大きな決断でしたが、この業界で生き残るためには、時代に沿った転換が必要でした。

 

■事業を拡大させたのは「お直しのプロ」としての矜恃

―現在は、どのようなものをお直しされているのですか。

社長:創業当時から培ってきた高度な染み抜きの技術とノウハウを応用し、着物はもちろん、洋服やバッグの染み抜き、黄ばみ直し、カビ落としなど、お客様の思い出の品を蘇らせるサービスを提供しています。個人のお客様の多くは、家族からのプレゼントといった「思い入れのある品」のお直しをご依頼されます。新品を買い直す以上の費用がかかったとしても「これからも使いたいから、直してほしい」とおっしゃいます。私たちはお客様のそのような“思い”に応えるため、カウンセリングでお客様のご要望をしっかり聞き取り、その汚れを取り除くために必要な作業についてご説明し、ご納得いただいてから作業に入ります。そうした丁寧な対応が功を奏し、現在は個人のお客様のみならず、呉服業界やアパレル業界、クリーニング業界からも「駆け込み寺」「最後の砦」と呼ばれるようになり、確かな信頼をいただいております。

 


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▲真剣に作業にあたる吉本様の作業現場。



―職人としての高度な技術と誇りがあるからこそ、一般的な着物クリーニングとは一線を画したサービス提供ができるのですね。

社長:はい。現在は全店舗に国家資格である染色補正技能士が在籍しており、その技術を遺憾なく発揮しています。
 ただし、課題もあります。ベテランの職人は高い技術を持っていますが、この仕事は視力が低下して染みを発見できなくなれば、続けることができません。そのため常に若い人材を採用し、長年引き継がれてきた直しの技術を途切れさせることなく次世代に伝えていかなければ、事業継続が不可能になってしまいます。とくにベテランの職人には、技術はもちろん、専門職としての誇りや、自らの手でお客様の大切な品を蘇らせることの喜びなども、若手にしっかりと伝えるよう指導しています。

 

■着物離れを食い止め、業界を蘇らせる

―現在は京都・金沢・東京で店舗展開をされていますが、地域によるニーズの違いはございますか。

社長:そうですね。いずれも着物の三大生産地ですが、金沢では一般の主婦でも着物を持っている方が多く、直しに10万円以上の費用がかるとしても、すんなりと納得してくださいます。とくに結婚式や正月などの祝いの席で着物を着る文化が残っている地方では、親から受け継いだ着物や、人生の節目を飾った思い出の着物のお直しをご依頼されるケースが多いと感じられます。
 いっぽう東京では、お直しの金額と、新品購入にかかる費用を比較して、依頼を見送るお客様もいらっしゃいます。そのため、東京は着物の“消費地”としての認識が強くなりました。このような地域性をしっかりと見定め、その土地ならではのニーズを正確に汲み取って柔軟に対応するよう、各店舗で社員教育を進めています。

―御社では、着物の衿や袖口の汚れの簡単な落とし方について、講習会を開かれてますね。

社長:実は、日本人のタンスの中には50兆円分の着物が眠っていると言われています。現代でも着物を持っている人は大勢いるのに、町中で着物姿の人をあまり目にしなくなってしまったのは「着た後のお手入れ方法がわからない」「汚したときに自分では洗えない」といった、着物に対する“敷居の高さ”を感じているからではないでしょうか。着物の手入れや染み抜きは、決して難しいものではありません。講習会では、プロが行っている作業を誰にでもできる方法としてお伝えし、アフターフォローまで細やかに行っています。

 

■より強固な経営基盤を築くために

―最後に、今後の事業展開についてお聞かせください。

先生:売上金額に占める個人顧客の割合を更に増していきたいですね。卸売業者との取引は1回の取引で大きな売上を見込めますが、卸売業者に依存しすぎるのは、経営的に安定しているとは言えません。金沢や東京の店舗では売上の多くを個人顧客が占めていますが、京都の店舗における個人顧客の割合は5割に満たないので、引き上げていきたいですね。
 また、振り袖のレンタル事業もスタートさせましたが、課題も見えてまいりましたので、今後更なるブラッシュアップを図り、継続的な事業として展開を図ってまいりたいと考えています。

 

―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。日本の着物業界の再生のためにも、今後益々のご発展を祈念しております。

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株式会社 吉本
代表取締役社長 新井 修
所在地  京都府京都市中京区猪熊通三条下る三条猪熊町648
TEL    075-841-7804
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渡邉重樹税理士事務所
税理士 渡邉 重樹
(京都エッサムファミリー会 広報部 部長)
所在地  京都市上京区土屋町通丸太町上ル小山町908
TEL    075-841-2913
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