税理士、公認会計士向け総合支援情報サイト

TOPエッサムファミリー会のご案内イベント記事大田区のモノづくりに学ぶ中小企業の生き残り戦略

大田区のモノづくりに学ぶ中小企業の生き残り戦略

平成23年12月15日(木)

■大田区のモノづくり 

 

 大田区は、「モノづくりのまち」として知られています。「モノづくり」といっても、最終製品をつくる工場ではなく、主に金属を素材として「削る」「磨く」「形成する」「メッキする」といった、ひとつの加工を専門に請け負っている工場がほとんどです。
 こうした工場が集まった大田区は、世界でも特異な「モノづくりの達人が集まったまち」です。それは「ビルの屋上から紙飛行機にして図面を飛ばすと、どんなものでも翌日には見事な製品になって出てくる」という言葉にも表れています。
 企業研究シリーズ第3回目では、こうした大田区のモノづくりを例に中小企業の生き残り戦略についての講演と、実際に大田ブランドに認定されている工場の見学を実施しました。

 

oota1.jpg■講演

 講師の奥山睦氏は、法政大学大学院政策創造研究課修士課程を修了されております。1990年に出版物やホームページの企画制作プロデュースを主とする株式会社ウイルを設立。それ以外に、静岡大学大学院工学研究科客員教授、公益財団法人日本生産性本部認定キャリア・コンサルタントなど幅広い活動をされております。
 2004年には東京都大田区から長年の区政発展への寄与により、区政特別功労者として表彰されました。主な著書に『メイド・イン・大田区』、『職人の作り方』などがあります。

 

 経済産業省の統計によると、大田区の事業規模は事業所数が約4千事業所、従業者数が約3万3千人。製造品出荷額は約7千億円で、機械・金属加工が全体の85%を占めており、事業所の82%が従業員9人以下となっているとのことです。しかし、大田区製造業の推移を見ると事業所数は1983年(9,177件)をピークに減少(2005年には4,778件)を続けており、従業者数も1978年(98,824人)から減少(2005年には37,641人)していることがわかりました。

 こうした状況の中で、大田区が取り組んでいる事例をご紹介していただきました。
今後の検討課題は、羽田空港などの交通アクセスの優位性や地域資源などをどう活かしていくかということでした。ご参加された先生方も「地域で時代に対応していこうというシステムが刺激になった」と講演のご感想を述べられておりました。

 

  • 【事例1】共同受発注会「メイドイン大田」

大田区異業種交流グループ6団体100社を母体に発足した共同受発注会。詳しくはこちら

 

  • 【事例2】首都圏最大級の工場アパート「テクノWING大田」

「住工調和環境整備事業」の一環として大田区が建設した工場アパート。工場棟は5階建てのビルに48の工場ユニットを擁する。詳しくはこちら

 

  • 【事例3】国際分業拠点「オオタ・テクノ・パーク」

2006年6月タイのアマタ・ナコーン工業団地にオープン。大田区に本社を置き、タイに分工場を置きたい企業を誘致。中小製造業が国際競争力を持てるように行政が支援し、公益財団法人大田区産業振興協会がコーディネート。詳しくはこちら

 

  • 【事例4】大田ブランド

社団法人大田工業連合会、東京商工会議所大田支部、公益財団法人大田区産業振興協会で「大田ブランド推進協議会」を組織。2010年12月末現在で加盟企業は105社。詳しくはこちら

 

  • 【事例5】農商工連携

山形県長井市との連携。平成21年7月、産学連携施設に(財)置賜地域地場産業振興センター東京事務所を開設。同施設には山形、浜松、岡山などの企業・大学なども入居。

 

 

■見学1 オールラウンドカンパニーを目指す「株式会社三信精機」

 

 最初の見学先は、大田区で40年間精密機械加工に携わる株式会社三信精機です。技術開発部と製造部を持ち、垂直展開による短納期対応が可能な省力化設備開発メーカーです。得意とする充填技術・成型技術は社内取扱い業種の比率も高く、メーキャップ業界市場においても、主要取引先は圧倒的な業界シェアを誇る企業が多くあります。

 

oota2.jpg

 まずは、企画推進部長の斉藤与志行氏より企業概要のご説明がありました。
 1970年に創業し、精密機械加工の技術面と設計開発の技術面において40年間歩んできました。その結果、設計から加工、組み立てまでの垂直展開が社内で可能になりました。それが「コストに対応した設計変更」、「内製を活かしたコストの圧縮」、「正確・迅速な検査工程による流出の回避」、「効率アップ」などの独自の強みを作りだしています。

 

 また、近年製造業に多くみられる従業員の高齢化ですが、株式会社三信精機では、20代から70代までの幅広い年代の方が勤務されております。その中で年配者の経験値による技能向上、若者のエネルギーによる瞬発力と持久力のアップ、情報共有による技術の蓄積が、OJTとともに行われています。

 

 今回見学のアシスタントをしていただいた小野澤くんが通う都立六郷工科高校では、企業と学校が一緒になって生徒を育成する東京版デュアルシステムを取り入れており、1年次に行うインターンシップと2年次と3年次に実施される40日間の長期就業訓練があり、小野澤くんもこのデュアルシステムにて就業訓練中でした。株式会社三信精機ではこうした取り組みにも積極的に参加されています。

 

oota3.jpgoota4.jpg

 

 

oota5.jpg

見学では、化粧品製造機械や作業現場を拝見することができました。こうしたB to B製品の他にも、B to C製品(写真掲載の“つめ小町”など)の開発・販売にも取り組んでいます。

ご説明と見学を通じて、創業者である先代から引き継がれているチャレンジ精神の風土を、感じることができました。

 

 

株式会社三信精機のホームページはこちら

 

 

 

 

 

 

■ 見学2 プラスチック射出成形・3D-造形のプロ「睦化工株式会社」

 続いては、プラスチック射出成形の高い技術と安全、安心、高品質なモノづくりを行っている睦化工株式会社です。昭和40年の創業以来、医療品成形と食料品容器成形で培った衛生管理と、化粧品容器成形で培った色調管理、色替え、樹脂替え技術はプラスチック射出成形業界トップクラスです。

 プラスチック射出成形とは、高熱のシリンダーによって溶かされた原料を金型に流し込み、一定時間冷却することでプラスチックが固められ成形品が出来上がります。プラスチックが金型に流し込まれる様子が注射器の作用に似ている事から、射出成形法と呼ばれています。

 

oota6.jpg

 睦化工株式会社では、薬局や食料品店でよく目にする医療品や食品、化粧品などのプラスチック製品の製造を行っています。その為、徹底した衛星管理と、クラス50,000のクリーンルームに設置した高機能検査機による品質管理を実施しています。

 

 見学の際も見学者全員が白衣とキャップの着用や、粘着ローラー、手指の殺菌消毒などを実施し見学しました。5Sの行き届いた製造工程では、巨大な成形機が並び、圧巻の光栄です。

 

 この衛生管理と品質管理の高さ、そして行動理念である「お客様に感動をご提供する」に基づいた社員の方のホスピタリティの高さが睦化工株式会社の強みであり、それが伝わってくる見学会でした。

 

oota7.jpg    oota8.jpg

 

 

oota9.jpg

 睦化工株式会社では、その他にも3D-CAD、3D-printerを用いた造形品、モデル、プロトタイプの製作等も行っています。

 

睦化工株式会社のホームページはこちら

 

 

■続々企画中!

 見学終了後も質問をされている先生、経営理念に共感し顧問先への指導に役立てたいと仰っていただいた先生など、講演・見学内容ともに、皆さん大変満足されておりました。講師の奥山様、こころよく見学させていただいた株式会社三信精機、睦化工株式会社の皆様、本当にありがとうございました。

 

 

今後も、企業研究シリーズを続々企画していきます。詳細はこちらのページで随時更新していきますので、是非ご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

ページの上部へ